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ー辞書は、思いを誰かに届けるために、言葉の海を渡る舟だー
営業部では目立たない存在であった主人公は、長く辞書編纂に携わり定年を迎えた元編集者と元大学教授より、言葉に対するセンスを見出され、新しい辞書「大渡海」の編纂を託される。採算性が低いために社内で厳しい立場に置かれながらも、辞書作りに真剣に打ち込む主人公の姿を見て、周囲の者も、一見地味に見える辞書編纂に対して、真剣に、そして愛着と情熱をもって向き合うようになっていく。
辞書編纂に対する愛着と情熱がそれに携わる人々の日常をも輝かせ、「大渡海」の完成までのドラマの中で、仕事に人生に情熱を持って全力で向き合うことの喜びと感動が描かれている。
誰かに思いを伝えるための言葉の重要さに気づかせてくれるとともに、目の前のことに全力を尽くすことで世界がぱっと明るくなることを教えてくれる作品。仕事がつらくなったときや投げやりな気持ちになったときに、また読み返したい。
正義感の強い主人公は、航空会社の労働組合の委員長として、劣悪な労働条件下にある組合員を想って、前代未聞のスト権をも行使しつつ会社側と激しく争いましたが、組合委員長を辞したとたん、会社の懲罰人事により、パキスタン、イラン、ケニアなど、僻地勤務をたらい回しにされてしまいます。
かつては組合で共に戦った同期が、いつしか会社側に取り入り出世コースを歩む姿が、主人公の生き方とは対照的に描かれていたり、また、主人公が組合員から信頼を集める一方で、主人公の家族は、主人公のために困難な生活を強いられる現実が描かれています。
学生のときに読んだときは、主人公のように「正しい」生き方をしたいと思いましたが、社会人になった今読んでみると、自分の信念だけでなく家族の幸せなど守りたいものが複数あるなら、一筋縄ではいかない理不尽な世の中にあって、因果応報をよく考えながら自分の言動を決めなければならないと感じました。
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(2巻)
2017-03-08 15:46:17主人公は、会社の懲罰人事により、パキスタン、イラン、ケニアと、次々に僻地に送られる。その間、主人公を女手一つで育てた母は亡くなり、子供たちは不登校になるなど、家族は危機に晒される。
しかし主人公は、イランでは、文化の異なるイラン王族と交渉の末、航空便就航を達成し、未就航のケニアでも、航空券の売上を向上させるなど、どのような状況でも成果を上げ、また、節を曲げることはなかった。
そんな中、国民航空の便が立て続けに墜落事故を起こす。国会において、安全対策等に関する厳しい追及が行われ、会社の腐敗した体質と主人公の懲罰人事が公に明らかとなり、ついに主人公は11年ぶりに帰国することとなる。
組織の中で生きる個人の戦いと、個人がもの言えぬ組織が腐敗していくさまが描かれており、個人の在り方と組織の在り方について考えさせられた。