Takumi Akabane's Bookshelf Takumi Akabaneさんの本棚

海が鳴っている。くぐもった、暗いその海の音が、私には、こんな季節はずれの時期に、こんな場所に立ちつくしているじぶんを叱りつけているみたいに聞こえた。

人間が功利主義の道徳を認める限りにおいて、天は天のうちで閉じているといわざるをえない。こうした人間は詩を知らないし、栄誉を知らない。こうした人間からみると太陽は、カロリー源にすぎないのだ。

〈共同体から切り離された自由な個人となったときに、人は、他者・社会・自己に対してどのような態度をとっていけばよいか〉--これこそが『精神現象学』のなかで問われている最大の問いなのだ。

生きている最中に、自分の一生をひとつの物語と見る見方は、よりよく生きる助けになるかもしれない。しかし、これからどうなるのか、最後はどうなるのかわかっていると思うのは愚かだ。それは一生が終わってからでないとわからない。