「面白くてためになる」そのうえに読み易い、知情意を刺激する歴史物語。
ローマ人の物語を読むのは、これが初めて。著者自信が、「歴史書ではない」と言っていたという情報を得ていたので、歴史小説のようなものなのかと思っていたが、歴史に分類してもいいと思える内容だった。読み手を引き込むような小説のような手法もあり、著者自身の観点(ストーリー立て)も織り交ぜられているが、そこに偏りがあるものの、逆にその点こそが本書を読みやすくしている大きな魅力だと思う。
三回におよぶローマとカルタゴの戦争が、毎回次回が気になる連続もののストーリーのように描かれている。各人物の人となりもよく描かれており、歴史事実をドラマチックに演出している。
ポエニ戦争の中心人物、ハンニバル。この稀代の…と言うか、人類史上最高と言ってもいい戦術家の人物像がわかり、彼の強み、弱みも理解することができた。それと同時にローマの政治、軍事システムの優秀さを知ることができたのはとても大きい。
ハンニバルは偉大な戦術家だったが、戦略家ではなかったという評判は概ね正しいと思う。しかしそのハンニバルにしても、彼を最後には打ち破ったスキピオにしても、晩年は恵まれなかったようだ。盛者必衰と言って片付けてしまうにはあまりにやりきれない人間の移ろいやすさを感じずにはいられなかった。
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Tomohisa Yoshikawa