前半は下山の思想について書かれており、今日本社会は下山の時代であるから下山に向かってどうしていくのがよいのか考える必要があると論じられている。
確かに現在の日本社会は大きな成長を望めず、いかにして落ちずに低空飛行を続けていくのかを問われている時代のように思える。
しかし、現在31歳の自分としては、これから登っていきたいのに国家と人生の下山について論じられても受け入れがたいという思いがあった。
そのため、前半を読んでいる内に気持ちが暗くなり、この先読み進めようか迷ったこともあった。
後半に入ると著者の五木寛之さんの浄土真宗や仏教の教えに基づいた社会観、人生観が書かれており、浄土真宗の教えに触れている自分としては腑に落ちる内容が多かった。
特に他力の風に任せることという章では、他力と言う事を人知の及ばない直感のようなものと定義されており、なるほどと思えることが多かった。
たとえば、五木寛之さんの健康法が書かれている箇所では、病院嫌いなのに80歳近くまで無事に秘訣が書かれていた。
それは体の内なる声に耳を傾けること。
たとえば、ぎっくり腰になったときに、普通は安静にすることを勧められるのであるが、体と対話して治していくそうだ。
歩いてみてダメそうならやめ、大丈夫そうならもうちょっと歩いてみる。
これの繰り返しで自分で治していく。
自分で決めて行動して治していくので、一見自力で治しているように思えるが、実は自分では何もしていない。
体の内側から聞こえてくる大丈夫か、ムリかという声を頼りにしているだけなので、他力であるということだ。
仕事でも同じように直感が働くことがある。
なんとなくやめておこう、行けそうな気がするなどだ。
その直感に対してなぜそう思うのかを突き詰めて考えてみると案外うまくいくことが多い。
初めは暗くて嫌だと思っていた本だったが、後半からは先を読みたいという衝動にかられた珍しい本だった。
人生登りだけでなく最期を迎えるにあたって、次第に下山の勇気と哲学を持たなくては...いい本です!
2011-06-23 11:43:25Wow! ノートはまだありません
Tomoya Hiramatsu