ビジネスブックバンク Vol.202より
ライフネット生命保険副社長、岩瀬大輔さんの、『入社10年目の羅針盤』です。
岩瀬副社長は、東大法学部を卒業し、BCG、リップルウッドを経て、ハーバード経営大学院に留学し、ライフネット生命保険設立に関わるという異色の経歴をおもちですが、キャリアを貫く軸は、「誰と働くか」だったそうです。ビジネスの基本なんて、そんなに変わるものでもありません。
であるならば、誰と働くか、誰と世の中に価値を提供していくかって、とても大切な視点だと思います。
さらに、相手の「誰と働くか」という基準を自分が満たせたら、お互いがそんな関係であれたら、最高ですよね。
でも、こんなふうに毎日の仕事を充実させられるかというと、そんなことはなく、僕たちは気分や環境の波にさらわれ続けています。
つまらない仕事なんてないと分かっていながら、人はついつい毎日を通り過ぎてしまいますよね。
本書は、そんな悩みを抱える多くの中堅ビジネスパーソンに一筋の光を照らしてくれるような、一冊です。
本書では、仕事がつまらなくなる原因を、
1.コミュニケーション
2.スキル
3.モチベーション
4.キャリアプラン
5.プライベート
6.チャレンジ
の6つであるとし、それぞれの原因と解決策が書かれています。
引退した人が言うような、哲学やスピリチュアル的なことは、人生にとって最も大切なものの一つですが、残念ながら
それだけでは目の前の問題は解決できません。
しかし本書は、大切なことが書かれているだけでなく、30台のビジネスパーソンであり、
最高の実務家のひとりでもある著者によって、具体的な事例を基に書かれているので、
あなたの目の前の課題を解決するヒントとするのに非常に有益な一冊だと思います。
月曜日が少しでも憂鬱だったり、ため息をつきたくなるようなことがある人に、特にオススメします。
■■■ 本書の目次
仕事は、他人の力を借りれば、4倍楽しくなる
勉強が嫌いな人でも人生の「学び」ならたのしめる
仕事を楽しそうにしている人の秘密
不採用通知は、自分の人生を闘っている賞状だ
仕事とプライベートは分けるな
目的地までの旅を楽しくする
■■■チェックポイント B B B C H E C K P O I N T
■できない仕事は、「借りる力」で解決せよ
“Managing Your Boss”
これは僕がハーバード・ビジネス・スクールの授業で教わった言葉で、「自分の上司を上手にマネージせよ」という意味です。
つまり、上司とのソリが合わないのは、相手が悪いのではありません。
自分が上司をマネージできていないということなのです。
上司と喧嘩することが目的なら、相手の嫌なところを徹底的に研究するのも構いませんが、
気持ちよく働きたい、自分のスキルをもっと伸ばしたい、ハッピーになりたいというのであれば、
上司を上手にマネージする方法を考えるべきです。
そのためにはまず上司に敬意をもって接すること。
自分がそのように接していれば、だんだんと上司のソリもあってくるようになるでしょう。
では上司をどうマネージすればよいか。
僕は、「借りる力」を持つことではないかと思っています。
仕事というのは、いかに他人の力を借りて進められるかということが重要なのです。
例えば大切なお客様のところに営業に行くとします。
その時に自分1人で行っても、相手にされないことが分かっている場合は、上司に付いてきてもらえばいいのです。
するとお客様にも、「ちゃんとした話を持ってきているんだな」ということが伝わります。
自分が話すのと上司が話すのとでは説得力が違いますし、この場合は上司には自分の後ろにいてもらうだけでもいいでしょう。
バックに経験のある人が控えているということを見せるだけでも、お客様に安心感を与えることができます。
また、プレゼン資料をつくったら、事前に上司に見てもらうのもいいでしょう。
「全然ダメじゃないか」と怒られるかもしれませんが、それは確実にブラッシュアップの方向に進んでいるということです。
お客さんの信用を失うことに比べたら、上司に怒られるダメージなどゼロといっていいくらいです。
僕は今でも自信のない時は社長の出口に資料を見せて、添削してもらっています。
上司としても、部下に頼られることは悪い気がしないものです。
「こんなこともできないのか」と言われるかもしれませんが、それでもアウトプットをしっかり出していけば、
上司もいずれ認めてくれるはずです。
仕事には「自分にできる仕事」と「自分にできない仕事」の2つしかなく、できないことはほかの人にやってもらうほかありません。
そのようにシンプルに考えれば、自分の仕事がもっとラクになるはずです。
できない仕事への心理的負担が半分になり、できる仕事は倍楽しくなる。
つまり他人の力を借りることで、仕事は4倍楽しくなるのだと思います。
■自分の取締役会を持て。注意してくれる人はだんだんいなくなる
「キミ、これはこうしたほうが早いんじゃない?」
「あなたのその癖、直したほうがいいと思うよ」
こう言われると、皆さん気分はよくないかもしれません。
多かれ少なかれ、自分を否定されているわけですから。
でもこういうことを言ってくれる人は、貴重なので大切にしてください。
入社10年目くらいのビジネスパーソンになると、自分を叱ってくれる人が少なくなります。
親とも離れて生活し、担任の先生がいるわけでもない。
学生時代に自分のことを叱ってくれた先輩や友人も、仕事が忙しくてなかなか会えない。
ふと自分の周りを見てみると、自分のメンター(助言者)というのは少なくなっていることに気づくと思います。
あなたの周りに、自分の仕事のスタイルに対してフィードバックしてくれる人は何人いるでしょうか。
年齢を重ねて家庭や仕事で忙しくなってくると、他人のことには構っていられなくなるのです。
大人になると、互いに気遣ってネガティブな注意はしなくなります。
ちょっと間違った方向に進みそうな友人を見ても、いちいち助言することは昔よりも少なくなっているはずです。
そんな中でもわざわざ自分の時間を削って、神経をすり減らして叱ってくれるのは、愛情があるからこそ。
叱咤されたら感謝して「ありがとう」と言えるくらいに受け入れるようにしましょう。
■海外では肩書よりも中身。自分の主義主張を示せ
心臓に毛が生えている人はともかく、普通の人は自分より偉い人の前では萎縮してしまいます。
しかしビジネスにおいては、そういった人の前でも堂々としていることがとても重要です。
例えばプレゼンをする際、発言者がおどおどしていては失敗してしまいます。
度胸の鍛え方、それは場数を踏むこと。
これ以外に方法はありません。
最初は失敗しても問題ありません。
度胸のない人でも、「慣れ」でなんとかなることがほとんどです。
スポーツ選手のインタビューなどを見ても、最初から堂々としていられる人はほとんどいません。
実績を積み、お立ち台に上がる回数が増えるにつれ、堂々としてくるものです。
度胸と並んでもう1つ重要なのは、自分の考えをしっかりと持っておくことです。
日本人は自分の主義主張を控えめにしがちです。
「出る杭は打たれる」といわれるくらいですから、そうなってしまうのも仕方がないのかもしれません。
しかし世界で仕事をするうえにおいて、自分の考えははっきりと述べるということはとても重要です。
その意見が正しいか否かは、気にする必要はありません。
よくないのは、自分の意見を持っていないということだからです。
僕はダボス会議で、世界の保険業界のトップが集まるランチョンセッションに招待されました。
行ってみると、8人しかいませんでした。
ただ、その面々が大物ぞろいなのです。
AIGの会長、プルデンシャルのCEO、スイス・リーのCEO、ミュンヘン再保険の会長、アメリカの保険監督者機構長官など。
そこにどういうわけか僕が交ざってしまったのです。
年齢も50代、60代の人たちが集まる中で、僕だけが30代でした。
少し前の僕なら、きっとおじけづいていたでしょう。
でもそのころには、何度かの国際会議への参加経験を経て、「こういう場では肩書よりも主張の明確さで評価される」ということを
実感していたので、落ち着くことができました。
そしてその場で、これからの保険業界はこうでなければならない、と述べたのです。
すると、参加者が話をとても面白がってくれて、まるでスタンディングオベーションのような形で拍手をし、
彼らの仲間入りをさせてくれたのです。
堂々と自分の持つ骨太の意見をクリアに伝えていけば、どんな人でも必ず受け入れてくれる。
そんな土壌があるようです。
逆に日本人の経営者が海外の会合に参加してもほとんど通用しないのは、その人が肩書ありきだからではないかと思います。
これから日本でも、自分の主張をもって、堂々と議論する風潮が芽生えてきてほしいと思います。
そうなれば、海外で活躍する日本人も増えるはずです。
自分よりも経験豊かな経営者の前で堂々としゃべることができたら、とても気持ちのいいものです。
ぜひ、自分の意見を述べるための場数を踏んでみてください。
■一日一日を無駄にせず生きる
僕はよく、講演の最後にこの言葉を紹介しています。
キャリアに悩む若手ビジネスパーソンすべてに贈りたい言葉です。
“Dream as you'll live forever,live as if you'll die tomorrow.”
(「永遠に生きるように夢見て、明日死んでもいいように生きる」)
これは、僕の人生訓にもなっているものです。
前半の部分は、夢は大きければ大きいほどいい、たくさんあればあるほどいい、永遠に生きても尽きないほどの
夢を持って生きようという意味。
後半部分は、明日死んでもいいように今日を全力で生きようという意味です。
刹那的にその日暮らしになってはいけませんが、人生はいつ終わるか分かりません。
この言葉の前半部分と後半部分、どちらが大事ということはなく、両者とも大事。
僕は一回しかない人生、このようにして悔いなく生きたいと思っています。
2011年10月にアップル創設者のスティーブ・ジョブズが亡くなった時、すぐに彼の自伝が出版されました。
それを読みながら思ったのは、人生の価値は死ぬときに決まるのだな、ということです。
例えば僕が死んだ時に、実際に出版されるかどうかはさておき、『岩瀬大輔物語』なる本が出るものと想像します。
その本が自分の子や孫に語り継がれるならば、自分の人生に意味があったのだと思います。
ジョブズほどの人間だから一冊の本になったのではありません。
一人ひとりの人生には、大なり小なりの物語が必ずあります。
その物語がどんな本になるのか想像しながら、その中の1ページとなる一日一日を無駄にせず生きることが大事なのではないかと思います。
それぞれの人生はドラマチックになるはずで、そうしなければなりません。
今の自分は、何章目あたりを生きているのか、その物語はこれからどうなっていくのかと想像しながら過ごしていると、人生はもっとエキサイティングになるのだと思います。
当たり前のことが書いてあるようですが、意外と出来ていないことばかり。無理しすぎても続かない、でも楽するのはだめ、要はちょっと自分に負荷かけるぐらいがちょうどいいってことかな。
2012-04-24 15:23:14 236p読了。以前、カンブリア宮殿にご本人が出口社長と出演された時から、若いけど素敵な人物だなと思っていました。この本は、後輩を指導(と、いうとおこがましいですが)する際のヒントを得たいと思って読んでみました。自分自身が新人の頃から気を付けてきたこと、諸先輩から教えてもらった知恵などが幾つも重複しており、読んでて「そうそう」って頷ける本でした。「つまらない仕事はない」、どんな仕事にも命を吹き込むのは自分自身の持って行き方なのよね。
2011-10-07 15:11:49Wow! ノートはまだありません
Kouichi Msxturbo Tachibana