読了。
ニーチェの著作は「超人」「永劫回帰」等、根底にある観念がどうにもわかりにくく、自分も何度か手に取る度に挫折を繰り返していたが、本書は思想の概要説明から、当時の時代背景についての記述もあって大変わかりやすかった。
大衆による市民社会と近代的平等主義からの思想的脱却を目指すという点において、オルテガの定義した「高貴なる者」とニーチェの「超人思想」は非常に近しいと感じたが、オルテガが「圧倒的なる努力、覚悟と知性を以て、無知蒙昧なる大衆の啓蒙を促した」のに対して、ニーチェは「大衆とは99%がバカな畜群であるからほっとけ!」と市民社会を罵りまくるところが、なんとも凶悪で毒素が強い。
ニーチェ思想がファシズムやスターリニズムといったファナティズムに利用されたのも頷ける。
故にニーチェの思想は正義感の強い人、特に若者には受け入れられにくいのだろう。
著者の竹田青嗣も本書の中で「学生時代は全く理解できなかった。(中略)理由ははっきりしている。わたしが、青年期に特有の「正義」の思想に深くつまずいていたからである。」と語っている。
「超人思想」とは、同質化、平等化された市民社会で共有される「善」や「正義」などは所詮、階級社会に対する大衆のルサンチマンを収めるため、平等に均された物事の解釈でしかなく絶対的な真理などではない。だからこそ、そんな解釈に囚われず、今ある自分を根本的に受け入れ、超然と生きていくべし!ということなのだそうだ。。
それは大衆のルサンチマンが生んだ階級闘争、近代民主主義、平等思想と市民社会、そしてその裏に潜むニヒリズムを克服するための精神的な指針であり、人生観なんだろう。
その根幹にあるのは決して諦観ではなく、「運命の絶対的肯定」であり、力強い人生讃歌のようでもある。
Wow! ノートはまだありません
Tomoki Sunayama