テレビ、インターネットアドテクノロジー、ソーシャルメディアを明快な図式で描き出す入門書。この本が優れているのは、何となくアタマで分かっていたことを“ああ、やっぱりそういうことだよね”という風に、素朴な実感を見事に言語化してくれている点にある。
新聞や雑誌、あるいは通信会社のように、これまでユーザーはコンテンツやコミュニケーション手段に対してコストを払っていたが、スマートフォンやソーシャルメディアが発達した現在ではコミュニケーションとコンテンツは一体化して、GoogleやApple、Facebookといったプラットフォーマーが収益化の鍵を握っている。
「デジタル機器にはコンテンツとコミュニケーションは同居します。…インフラコストをユーザーから徴収するシンプルなビジネスからもう一歩ステップアップし、インフラの上でおこなわれるビジネスが巨大化しているのです」(103-105)
この“インフラの上でおこなわれるビジネス”の最たる者としてインターネットのアドテクノロジーを挙げ、その近未来を次のように予見する。
「アドテクノロジーで最後まで価値をもつのは、突き詰めれば、人々の行動痕跡、行動データだけになるかもしれません。しかし、そのカテゴライズされたデータのクセなどアナログな知恵の蓄積による判断は、人がする仕事としてのこります。また、バイラル広告のように企業がコンテンツを作る仕事も減らないでしょう。コンテンツを作る仕事は減るどころかこれから爆発的に増えます。…アドテクノロジーの世界は、最後にアドエクスチェンジと行動データ分析、それにコンテンツを作る企業、この3つに集約されるでしょう」(177-178)
コンテンツを作る仕事は爆発的に増える。しかし、インターネットの最大の問題は「売上単価が圧倒的に小さい」ということだ。「(ネットメディアで売上を伸ばすには)ボリュームを増やすしかありません。そして、単価が安いためにボリュームを稼ぐ場所は国内だけでなく海外にも広がるでしょう」(198)
この行動履歴の分析による広告/サービス最適化とグローバル展開はメディアにとっても必然的に行き着くところ。筆者は映像コンテンツを例にNetflixやHuluなどを例に挙げていたが、テキストメディアも例外ではない。編集に携わる人も、メディア営業に携わる人も、読んでおいて損はない。
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Tomokazu Kitajima