本がいちばん幸せだった1960年代から80年代にかけて時代の最前線を支えたベテラン編集者たちによるエッセイ・対談集。4人が登場するが、それぞれ出版社も分野もバラバラで「編集観」も四者四様だが、長年の経験から得た仕事への誇りと言葉の重みはどれも同じ。
とくに興味深いのは「編集の危機とその打開策」と銘打たれた第3部の対談・討論。「売れる本」にしか目がいかない出版社と書店、編集よりも広告・マーケティングが優先される本づくりの現場に果たして未来はあるのか、という警鐘を発している。
もう8年も前の本だけれど既に(紙の)出版事業に対する危機感は共有されており、いまからこの業界で働く人や働こうとしている人にとっては、いささか暗い気持ちになる部分もあるかもしれない。それだけ覚悟と努力と忍耐の必要な仕事であるということは間違いない。それよりもなによりも、編集人としての誇りと愛情に満ちた筆者たちの言葉は感動的ですらある。
藤原書店と言うことで、相当に堅い内容を想像したが、学者ではなく編集人が書いているだけあって、文章も平易で気軽にすぐ読める。創作というモノに対して少しでも興味を持つ人にとっては、読んでおいて損はない。いわゆるHow toではなく“本を創る心構えを学ぶための本”。
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Tomokazu Kitajima