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いささかセンセーショナルなタイトルではあるが、メディアに携わる人にとっては身につまされる話がとても多い。

冒頭は『文化通信』の編集長、星野渉氏へのインタビュー。星野氏によれば、良くも悪しくも出版社をここまで生きながらえさせているのは取次の存在であるという。取次の前倒し入金があることで、本が流通さえしていれば(たとえ売れなくても)自転車操業で金が回るシステムが出来上がっているからだ。星野氏は、取次がなくなれば日本の出版社の半数は倒産する、とまで断言する。

とはいえ出版業界に希望が失われたと言うことではない。海外と比較して日本の出版社の強みは、「(エージェントを介するのではなく)著者と直接やりとりをする、その距離の近さです。したがって、権利を死蔵させるのではなく、著者と密にコミュニケーションをとって、著作物、つまり権利の再活用を積極的に図ることが本来できるはずなのです」(47)という。その“著者との距離の近さ”を利用したワンソース・マルチユース展開による収益化に希望を見いだそうとしている。

つぎに電子書籍の将来像について。筆者によれば、これまでの雑誌をスマホやタブレットで“見られる”ようにするだけではとても普及はおぼつかない、という。雑誌に代表される紙媒体は様々な記事やコンテンツがひとまとめにされて販売される“バンドル型モデル”だが、ネットの世界では「目的のコンテンツだけをピックアップし消費していく」(42)。したがってアンバンドル(分解)された形での提供を前提とすべきと説く。

そしてなかなかガツンと来たのはニワンゴの夏野剛氏へのインタビューだ。ニコニコ動画の成功について、たんに開発費を絞るのではなく、「『何がコストでかかるとき、どんな収入があがるのか』という収入とコストのバランスを皆に意識付けさせる会議をしています。…そういった新しい取り組みへのスピードを落とさないまま黒字にするというのが、目標だったんです」(186)。なるほど。

そこそこ売り上がっているから、まずは目先の収益を考えて、開発投資は抑えて利益の確保に走る、みたいな目先に陥りがちな状況に喝を入れてくれる一冊。

2012-02-23 16:18:40

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