「壁」という言葉は本来、目の前に立ちはだかるもの、なんとか乗り越えるべきもの、として語られる。しかしながら、ここでの壁は自己に対峙する存在である。私たちは壁をつくる。部屋と部屋の仕切り、人と人の間、体と外気との境目さえも、服という壁をつくる。壁越しに聞くひそひそ話についつい耳をそばだてたり、壁際の隅っこが妙に落ち着くのは、きっと人が壁というものをこよなく愛しているからに違いない。
なるほど、壁こそが、人間を人たらしめているだ!というひらめきが頭をよぎった瞬間、恐ろしさを覚えて本を閉じた。
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Takanaga Fujii