ユーモア・ミステリの旗手による狂言誘拐もの。テレビドラマ化もされた。
ひょんなことから極道の娘と知り合い、その娘の病気の妹を助けたいがために狂言誘拐を思いつく主人公。しかし、受け渡しのトリックなどを思いつくことも出来ず、先輩を頼るところからストーリーは思わぬ展開を見せるようになる。
東川篤哉の作品に共通するように、主人公は相変わらずダメダメな青年で、何をするにもいいところがない。狂言誘拐を思いついてもどうやって身代金の引き渡しをするかは先輩次第。思わぬ展開を見せたあとの謎解きも主人公は聞いているだけで自らその謎を解いたりしない。烏賊川市シリーズはきちんと職業としての探偵が出てくるが、本作には当然出てこないので、謎解きをするのは素人探偵だ。
狂言誘拐の身代金引き渡しの方法から、ヤクザの抗争、偽札作りなども絡み合って、死人の出ない物語かと思いきや湧いて出たような死体が登場したりする。関門海峡の潮の流れなども物語に関係してくるなど、下関と門司という土地柄をうまく使った舞台設定もうまい。動機の部分はやや弱い感じはするし、誘拐ものとしては異色の展開となるが、なかなか面白く読むことが出来た。
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Atsushi Egi