心の傷だけならば時と共に癒えることもあろうが、己が身体のこの醜悪な現実は死に至るまでつづくのだ。(中略)しかし何処が悪かった? 己の何処が? 何処も悪くなかった。己は正しいことしかしなかった。強いていえばただ、「我在り」という事実だけが悪かったのである。
2011-01-23 15:06:44 122p善人が究極の勝利を得たなどという例は、遠い昔は知らず、今の世ではほとんど聞いたことさえ無い。何故だ? 何故だ? (中略)彼は地団駄を踏む思いで、天とは何だと考える。天は何を見ているのだ。そのような運命を作り上げるのが天なら、自分は天に反抗しないではいられない。
2011-01-23 14:56:27 56p今思えば全く、己は己のもっていたわずかばかりの才能を空費してしまったわけだ。(略)才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己のすべてだったのだ。己よりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために、堂々たる詩家となった者が幾らでもいるのだ。
2011-01-23 14:43:41 16pWow! ノートはまだありません
Satoshi Shiozawa