集合知の力、衆愚の罠――人と組織にとって最もすばらしいことは何か

集合知を出現させるには、多様な情報を組み合わせ、意見の異なる者に耳を傾け、表面には見えない本質を理解する方法を継続的に探っていかなければならない。上からの押しつけや、実情と結びつかない専門家頼みの解決策ではなく、集団自身の表現として、合意や団結した行動を実現していかなけばならない

集合知の追求とは、ヒエラルキーの頂上をめざしたり、他者支配を実現しようとする争いの歴史から、集団を救いだそうという意識的な企てだ。未来を変えていくためには、世界をこれまでとは異なる目で見つめられるようにならなくてはならない。人はそうやって学ぶ。集団も同じだ。

衆愚は引力だ。あらゆる集団に発生し、知と反対の方向へ引きこもうとする。衆愚に陥った人間たちは、他者との連帯や大いなる正の力へと向かうのではなく、分断と細分化へと引きずり込まれていく。既知のもの、既知だと思っているものにしがみつく。

知とは、人間の共同体が賢明な選択をし、未来は決して他人事ではないと実感し、それを軸に軌道修正していくことのできる力を意味する。知とは連帯のことだ。人と人、あるいは人と総体との結びつきのことだ。知とは本質として相関的な概念であり、それを特定の人物と同一視しすぎれば沈下するものなのだ

集合知は、集団による決断のあり方となって表れる。それを触発するのは、構成員の共通点と品性だ。「ひとりに起こることは全員に起こること」と考えられる洞察力や行動力であって、単なる分析的判断でもなければ、妥協、投票、あるいはWin-Winを選ぶというだけの話でもない。