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今週の月曜日から風邪を引いてしまい、寝てるか、読書するかという生活でした。風邪は地味につらいです。今日から戦線復帰しました。
この間、8冊の本を読みました。しかし、その中でわざわざ文章を書いてまで、誰かに紹介したいと思えた作品は、伊藤計劃『虐殺器官』だけです。この作品の良さを滔々とまくしたててもいいのですが、ミステリ要素を多分に含む本作を、所謂「ネタバレ」を回避し、かつ、この作品の素晴らしさを紹介するという高度な技量を持ち合わせてはいないので、頭に浮かんだことをつらつら書きます。
ジャンルの分類にどれほどの意味があるか測りかねます。また、ジャンルの特定だけで「わかったつもり」になるのも避けたいとは思います。とはいえ分類は簡単で、SFです(出版社が早川書房だということだけからも多くの情報が引き出せるだろう)。SFというと荒唐無稽なイメージを浮かべてしまいがちですが、現代社会のどこかを拡大鏡に映して構成された世界観は、思考実験のようであり、また、未来予測のようでもあり、優れたSFは、現実以上にリアリティーがあるように思います。その意味で、SFという分野は非常に批評性が高いジャンルであると感じます。
本作は、9.11以後のテロとの戦いを主に暗殺を専門とするアメリカ兵の一人称視点から描いたものです。現実の国際状況や実際の対テロ対策としてアメリカをはじめ先進国がどのような手段を講じたかという情報は不快になるだけなので、意図的に排除している僕が、本作のリアリティーを云々するのはちゃんちゃらおかしいのですが、しかし、このことは、逆説的に、「人は自分の見たいものしか見ない」ということを例証しているようで、寒気がします。僕らの快適な生活の下にはどれだけの犠牲が払われているか、今ならネットを駆使すれば、簡単にわかるのに、誰もそんなことはしません。
またナイーヴな一人称視点が、圧倒的な戦争という現実を眼の前にしてなお、テクノロジーの進歩により、成熟を拒否された人間の稚拙なまでの愚かさを巧みに歌い上げているように思う。
これで本作の素晴らしさが伝わったとは全く思えないが、とにかく、現代の「罪と罰」を読んでください。リアルで会える人には、お貸しします。というか、無理矢理読んでいただきます。「虐殺器官」が何かわかったとき、なぜそれを使っているのか、そして、主人公の最後の決断には戦慄します。

2012-05-24 13:13:45

Excellent!

2011-05-04 09:44:02

 暗殺のプロフェッショナルが「虐殺の文法」だけを武器に全世界を虐殺の渦に巻き込む謎の男を追いかける話だけど。何だ?もう「虐殺の文法」は完成してんじゃん?作者が存命だったら今の世界情勢をどう語ったんだろなぁ・・・。これを読んでから「ハーモニー」読んだがええよ?

2011-02-23 19:07:55 17p

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