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話は、火星への有人探査を成功させた乗組員の一人と、近々行われるアメリカ大統領選のPR画像製作を任された人物とを軸に動く。乗組員の一人・佐野明日人は彼の心の中で大きな比重を占めるほどの存在となった悩みを抱えている…大統領選に関わることになったウォーレン・ガードナーは、現政権が犯した凄まじい過ちに迫っていく…この二つは一見関係のないように見えるが、最終的には一人の人物によって一つにつながっていく。その先に何が待ち構えているのかが気になって、ページをめくる手を止められない作品である。
この作品の著者はデビュー作で芥川賞を受賞しているのだが、その受賞作は凄まじく難解で(意見には個人差あり)、本屋で数ページ読んだだけで挫折するようなものだった。しかし、これは特に難解な表現もなく、読みやすかった。しかし、心の中の動きを表現する時には字数が多くなり、その感情を追体験することができるほど生々しく感じる。芥川賞を受賞しているだけあって、言葉の使い方が見事だ。私が気に入った表現は「役に立つから生きていいのではない、生きているから人の役に立ちたいのだ」という部分だ。特に美辞麗句を使っているわけではないが、こういう時だからこそ心に響いた。

2012-04-03 22:58:32

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