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シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

レイチェル・ボッツマン(著)
ルー・ロジャース(著)
小林 弘人(監修)
関 美和(翻訳)

日本放送出版協会

発売日: 2010-12-16

シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略 Atsushi Egi さんのノート

インターネットやモバイル端末を有効に使うことで、新たな消費形態が広まりつつあることを数多くの実例を元に検証した話題の書籍。
Amazonも口コミを有効に活用しながら消費活動につなげようという意味では既存のビジネスとは一線を画しているが、この本で紹介されるものはさらに先を行く。インターネットとGPS内蔵のスマートフォンがあって初めて成り立つようなカーシェア、シェアサイクルなどはすでにアメリカやヨーロッパをはじめとしてある一定以上のユーザーを確保し、一般化の時代に入っている。エアビーアンドビーのサービスを活用し、自宅の空き部屋を旅行者に提供することで見知らぬ人同士の交流が生まれていたりする。
本書ではこれまでの「欲望を増長し、必要以上の消費に走らせる」ビジネス形態を「ハイパー消費」とよび、その行く末が太平洋のゴミの吹きだまり「太平洋ゴミベルト」であるとする。世界各地で廃棄されたゴミが流れ着き、どこにも行けなくなったゴミのサルガッソーであるが、大変広大な海域を見渡す限りゴミが埋め尽くしているという。この事実だけでもこれからの消費、あるいはゴミに対する考え方を変えなければというきっかけになるのではないか。
一方、これらの課題を解決する方法の一つが、本書の主題である「コラボ消費」であるという。たしかに、カーシェアなどを有効に使えば、必要以上のクルマを所有する必要はないし、そもそも必要以上に生産する必要がなくなる。自動車メーカーにとっては「生産→販売」ではなく、持続可能性の高いクルマを「利用してもらう」ことでもうけることにパラダイムシフトしていかなければ生き残れないことを示唆している。他にも、使い古しの衣類などを他の人と交換するサイトや、使い回すことを前提に作られた商品など、要らなくなったら捨てるという考え方から脱却するいくつもの事例が紹介されている。
残念ながら、日本ではこうした歩みに対し、今ひとつ乗り切れていない感じがする。また、シェアの基本は都市基盤にあると感じられる部分も多く、田舎でこのような考え方をどのように実践していくかはまだまだ課題が多そうだ。しかし、これまでの「私」中心の消費から「コミュニティ」中心の消費へ、ひいてはそれが地域の再生に繋がる可能性を秘めていることは否定できない。小さな事からでも自分に出来ることを考えていきたい、そう思える一冊である。

2012-06-16 19:48:41