Kiyoyuki Saito's Bookshelf Kiyoyuki Saitoさんの本棚

自分では何も生み出さず、何も理解していないくせに、口当たりの良い、受け入れやすい他人の意見に踊らされて集団で行動する連中です。彼らは自分が何か間違ったことをしてるんじゃないかなんて、これっぽっちも、ちらっとでも考えたりはしないんです。

「勇敢卑怯は、時の勢であり、強い弱いは、時の有様に過ぎぬ」
「次第に苦しめられ、刑具の下に置かれるようになってから、節義に著こうとしても、ほとんど不可能であります。それ故、古、刑を士大夫に施すのをはばかったの、このためと申して、さしつかえありません」

「心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しない」とリーダーは静かな声で繰り返した。

一介の無力な市民と、一国の暴力を行使する組織とを対等に置くこうした考え方に私は滑稽を感じたが、今無意味な死に駆り出されて行く自己の愚劣を笑わないためにも、そう考える必要があったのである。