Kouichi Msxturbo Tachibana's Bookshelf Kouichi Msxturbo Tachibanaさんの本棚

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Note List ノートリスト

ビジネスブックバンク Vol.210 2013.1.6 SUN

■■■今週の書籍紹介

・土光敏夫 信念の言葉
・PHP研究所 (著, 編集)

■■■ 本書の目次  

第1部 人生について
第2部 経営について1─「人の上に立つ」ということ
第3部 経営について2─「組織を動かす」ということ
第4部 行革について

さて、本日ご紹介する一冊は、石川島重工業(現IHI)、東芝の社長として両社を経営再建し、経団連名誉会長、産業構造審議会会長、臨時行政調査会会長等要職を歴任された、土光敏夫さんのことばをまとめた、『土光敏夫 信念の言葉』です。
僕は、経済的にも不安定さを増し、伊勢と出雲の式年遷宮が重なる今年は、経済も個々人の精神も、変革の年になると思っています。
そんな本年を迎えるにあたり、幾重もの困難を乗り切り、日本の改革・発展に尽した土光さんのことばを綴った本書は、年の初めに心のフレームを整えておくためにも最適な一冊だとおもい、ご紹介します。

■■■チェックポイント B B B C H E C K P O I N T

■艱難汝を玉にす

計画とは「将来への意思」である。
将来への意思は、現在から飛躍し、無理があり、実現不可能にみえるものでなくてはならない。
現在の延長線上にあり、合理的であり、実現可能な計画は、むしろ「予定」と呼ぶべきだろう。
将来への意思としての計画は、困難を受け入れ、困難にいどみ、困難に打ち勝つモチーフを、自らのうちにもたねばならない。
計画は、自己研鑽の場を作る高い目標を掲げ、何がなんでもやりぬく強烈な意思の力によって、群がる生涯に耐え、隘路を乗り越える過程で、真の人間形成が行われる。
艱難汝を玉にす。
そして艱難を自らに課し続ける人間のみが、不断の人間的成長を遂げる。

■日に新たに、日々に新たなり

これは湯王の銘である。
一つだけ座右の銘をあげろといわれれば、躊躇なくこの言葉をあげたい。
神は万人に公平に一日二十四時間を与え給うた。
毎日の二十四時間をどう使うか。
私は一日の決算はその日のうちにやることを心がけている。
きょうが眼目であるから、きのうの尾を引いたり、あしたへ持ち越したりしない。
きのうを悔やむこともしないし、あしたを思いわずらうこともしない。
このことを積極的にいい表したのが「日新」だ。
きのうもあしたもない、新たにきょうという清浄無垢の日を迎える。
きょうという一日に全力を傾ける。
きょう一日を有意義に過す。
これが、私にとって、最大最良の健康法になっているかもしれない。


■自分の肚をもつ

どの時代でも変化というものはある。
今、激動の時代なんていうけれども、ただ変化のスピードが速いだけだ。
昔カゴに乗った東海道五十三次が、今は新幹線でいくけれども、目がまわることはない。
問題は、その変化の裏側にある体制のでき方をどういうふうに静かに読みとるかだ。
だからそういう意味からいえば驚くことなんてないんであって、変化の速さの末梢的な現象にまどわされて右往左往していたら、それこそ間違いが起こる。
経済界も、もっとよくしっかりと将来を見通して如何にあるべきか、根本問題を押さえなければならない。
そして、そういう中で、自分の肚をもつことが必要なんだ。

■情報加工

風のつよい日、殿様が家老に「火の用心」をいいつけた。
家老は奉行に、奉行は与力に、与力は足軽に、逐次火の用心を伝えた。
その夜、火が出て城は丸焼けになった。
実は企業におけるコミュニケーションにも同じようなことが見受けられる。
「社長曰く」がそのままの形で各段階を素通りしてしまうのである。
各階段は上からきた情報をうのみにしないで、自分のことばに翻訳することが肝心だ。
一般的にいえば、トップは「目的(結果の明示)」、
エグゼクティブは「目標(目的への戦略)」、
ミドルは「方針(目標達成のための方法)」、
一般社員は「手順」といった形に変えていくのである。
このような情報加工がないと、馬の耳に念仏で終る。

■精鋭を育てる

少数精鋭という言葉がある。この言葉には、二つの意味がある。
一つは、「精鋭を少数使う」ということである。
そしてもう一つは、「少数にすれば皆が精鋭になりうる」ということである。
私は、後者の意味を重視したい。
前者だと、既にでき上がった精鋭を自分の手許に集めるということで、虫がよすぎるというものだ。
ところが後者では、今自分の手許にいる玉石混淆の人々を、玉にはますます磨きをかけ、意思はトレーニングによって玉に変えていこうということで、全員の能力を底上げすることを意図している。
そうしてこそ、真に人を育てることができるということである。

2013-01-07 11:01:08

ビジネスブックバンク Vol.208 2012.12.23 SUN

■■今週の書籍紹介
・リストラなしの「年輪経営」 
・塚越寛(著)

■■ 本書の目次  

第1章 「年輪経営」を志せば、会社は永続する
第2章 「社員が幸せになる」会社づくり
第3章 今できる小さなことから始める
第4章 経営者は教育者でなければならない

 年輪経営とは、木がどのような環境でも少しずつその年輪を重ねるように、どのような環境でも、少しずつ「低」成長していきましょう、という概念です。
 この背景に横たわる思想は非常に突飛ですが、実は最も大切なことです。
 なぜ、低成長を志向するかというと、売上が上がることではなく、「社員が成長を感じられることが続くこと」が目的だからです。
 具体的には、急激な拡大により社員が疲弊したり、一時的なブームにより、そのしっぺ返しが来ることはマイナスだと捉えているからです。
 塚越社長は、経営のあるべき姿とは、「社員を幸せにする会社をつくり、それを通じて社会に貢献する」というものだとおっしゃっています。
 例えば、会社は家族であるならば、食べ物が少なくなったからと言って、家族を追い出して残りの社員で食べ物にありつくようなことは
あってはならないと。
 さらに、もし途中で会社が無くなれば、社員が幸せではなくなってしまうので、企業は継続し続けなければならないという考えで経営されており、まさにゴーイングコンサーンを理念としているような会社です。
 このように自社があるべき姿、つまり、社員を幸せにするために、少しずつ成長し続けることを目指す年輪経営は本当に素晴らしいと思います。
 僕は経営コンサルタントなので、実はこの話は良く耳にします。
 ですが、それと同時に残念なのは、多くのコンサルタントが、伊那食品工業を「寒天」という特殊で独自な商品を持っているから、できたことで、誰にでもできることではないと揶揄していることです。
 しかし、僕は絶対に違うと思います。伊那食品工業は、「誰にでもできることを、誰にもできないくらいやった」のです。
 そんなおいしいビジネスなら、競合が入ってきて今頃会社が存在していないはずですし、進化していなければ、今頃ゼラチンなどの代替商品に押され、事業が継続できないはずです。
 例えば、下駄職人が、靴の時代になった時に、自分は関係ないと言って消滅したのが良い例です。
 誰もやっていないなら、誰より足や歩くことを知る下駄職人に一日の長があったはずですし、社会はそれを求めていたはずなのに、そこで終わってしまったわけです。
 下駄職人は、下駄を売っているのではなく、「より快適に自分で移動し、何かの目的を果たす」ことを、提供していたわけですので、これをあきらめない限り絶対に価値は続いたはずです。
 だから僕も、きっとその理念や想い、価値が必要とされる限り、企業は永続させられると信じています。
 伊那食品工業も、ビジネスとしても仕組みをしっかりとつくっており、ずっと買い続けてくれるお客様に価値を提供し続け、ファンをつくっているからこそ、今があると思います。
 だから、本書は本当にお薦めしたい一冊です。特に経営層の方にぜひご一読いただきたいですね。

■■チェックポイント B B B C H E C K P O I N T

■会社は社員を幸せにするためにある

 私はひたすら、「会社を永続させたい」「会社は永続することに最大の価値がある」と考えて、経営に邁進してきました。
 正直に申し上げれば、最初の20年間は、そんなことを考えるゆとりはありませんでした。
 生き抜くために、会社を存続させるために、ただそれだけに必死だったからです。
 少し余裕が出てきて、「会社とは何のためにあるのか」「会社にとって成長とは何だろうか」と考え始めるようになったのは、入社して25年を過ぎた頃だと思います。
 長い間考え続けて得た結論は、「会社は、社員を幸せにするためにある。そのことを通じて、いい会社を作り、地域や社会に貢献する」というものでした。
 それを実現するためには、「永続する」ことが一番重要だと気がつきました。
 会社が永続できなければ、どこかで社員の幸せを断ち切ることになってしまうからです。

■急成長は敵、目指すべきは「年輪経営」

 伊那食品工業は1958年の創業以来、2005年までの48年間、ほぼ増収増益を続けてきました。寒天という地味な商品を、自ら市場を開拓しながら、ジワジワと育ててきた結果です。
 増収増益を続けられたことで、自己資本も充実でき、ほぼ無借金経営を実現しています。しばしば「よくそんなに長く増収増益が続けられますね」と聞かれますが、会社の永続を願い、「遠くをはかる」経営を心掛ければ、自ずとそうなるのではないでしょうか。
 もちろん、会社ですから、山あり谷ありです。しかし、いい時も悪い時も無理をせず、低成長を志して、自然体の経営に努めてきました。
 私はこの経営のやり方を「年輪経営」と呼んでいます。木の年輪のように少しずつではありますが、前年より確実に成長していく。この年輪のような経営こそ、私の理想とするところです。年輪は、その年の天候によって大きく育つこともあれば、小さいこともあります。しかし、前の年よりは、確実に広がっている。年輪の幅は狭くとも、確実に広がっていくことが大切なのです。年輪の幅は、若い木ほど大きく育ちます。年数がたってくると、幅自体は小さくなります。それが自然です。
 会社もそうあるのが自然だと思います。会社も若いうちは、成長の度合いが大きいものです。年数を経てくると成長の割合は下がってきますが、幹(会社)自体が大きくなっているので、成長の絶対量は増えているものです。
 また、木々は無理に成長しようとはしません。年輪は幅の広いところほど弱いものです。逆に、狭い部分は堅くて強いものです。こうしたところにも、見習うべき点があります。
 実は、年輪経営にとって、最大の敵は「急成長」なのです。経営者にとって、この急成長ほど警戒しなければならないことはありません。
 当社にもかつて何回か大手スーパーから「商品を全国展開しないか」というお誘いがありました。私は熟慮した末に、このお話を断らせてもらいました。商品をスーパーで扱って頂ければ、売上げは急成長するでしょう。しかし、私は、「身の丈に合わない急成長は後々でつまずきの元になる」と判断しました。
 年輪のように、遅いスピードでもいいから、毎年毎年少しずつ成長していくことを選んだわけです。
 ところが、年輪経営を心掛けている私にも抗し難い波が押し寄せました。それは、2005年に巻き起こった寒天ブームです。テレビの健康番組で、寒天は健康にいいということが広まって、一挙に需要が増えたのです。それまでも寒天に含まれている水溶性の食物繊維が体にいいことは分かっていましたが、ダイエットブームと相まって、まさに火が付いた状態でした。
 それでも、いつもなら私は無理をするような増産には踏み切りません。ただ今回は、お年寄りの方や福祉・医療関係者から、「ぜひ使いたいので頼む」とお願いされたことが心に響きました。
 私は社員のみんなに「急成長は望んでいないが、こうした観点を切実に必要としているお客様がいるので、どうしたものか」と相談しました。社員たちは「そういう事情であればやりましょう」と応えてくれました。
 2005年、伊那食品工業はそれまでやったことのなかった昼夜兼業態勢で寒天の増産に取り組みました。その結果、この年の売上げは前年比40%増となりました。かつてない伸び率に、私は喜びではなく懸念を感じていました。
 案の定、寒天ブームが一段落した2006年からは、売上げが減少に転じました。利益も前年を下回りました。過大な設備投資などはしていなかったので、通常の生産体制に戻すだけで、大きな痛手は受けなかったのですが、それでもこの後遺症から脱するには数年かかりました。寒天ブームは、逆に「年輪経営」の正しさを、私たちに教えてくれたものと思っています。

■社員が「前より幸せになった」と実感できることが成長

 売上げ至上主義の会社はいまだに多いようです。そういう会社の経営者は、とにかく売上げを伸ばさないと会社は成長できないと、頭から信じています。はなはだしい場合は、原価割れで赤字になっても、売上げを増やそうとします。
 もちろん、売上げが拡大していかないと、会社経営が成り立たないということは理解できます。しかし、売上げが伸びることが、会社が成長することだと考えるのは、ちょっとおかしいのではないでしょうか。
 「売上げの伸び=会社の成長」と見るから、売上げを増やすことが会社の第一目的になってしまうのです。売上げが大きく増えたから、会社も大きく成長したと思うことは、錯覚でしょう。売上げが増えて利益も増えることは、喜ばしいことです。
 しかし、売上げや利益を大きくすることが、会社経営の目的でしょうか、会社の成長の証でしょうか。私は、会社はまず社員を幸せにするためにあると考えています。売上げを増やすのも、利益を上げるのも、社員を幸せにするための手段に過ぎません。
 年輪経営は、「売上げも利益も前年を上回ればいい」ことが目安です。大幅な売上げ増、利益増は、求めていません。何かのチャンスがあって、無理をすれば一年でできることも、自然体で二年、三年と時間をかけて達成していきます。その方が、会社を永続させることにもつながるわけです。
 私は、会社が成長するということは、社員が、「あっ、前より快適になったな、前より快適になったな、前より幸せになったな」と実感できることだと考えています。快適さや幸せを感じる度合いがだんだんに高まっていくこと。これが会社が成長している証なのです。売上げも利益も、この会社の成長の手段に過ぎないと思います。
 幸せを感じるには、より給料が増えるとか、より働きがいを感じるとか、より快適な職場で働けるとか、さまざまなことがあるでしょう。これらの実現と会社永続のバランスを取りながら経営していくべきだと考えています。

■人件費はコストではなく、会社の目的そのものである

 私は、人件費はコストとは考えていません。人件費は目的なのです。
 例えば、兄弟とか、親しい友人で事業を起こしたとします。その時に、人件費が少なければ少ないほどいいと思うでしょうか。そんなことは、ないはずです。みんなで一生懸命に働いて、より多くの報酬を得て、幸せになることは、事業を起こした目的の一つなのですから。
 報酬を減らして、会社の利益を増やしても、事業を起こした意味がありません。上場企業は別でしょうが、一般の中小企業であれば、使うべきものを使い、払うべきものを払った後で、利益がゼロになっても構いません。もちろん、会社の維持に必要な経費は使った上でのことですが。使うべきもの払うべきものを支出した上で、利益がゼロになっても恥じることはありません。
 私が「利益はカスだ」という理由が、ここにあります。なんでカスをいっぱい貯めなきゃならないのか。本来、使うべきこと払うべきことを、きちんと実行していれば、企業の永続は可能です。これが未上場の中小企業の正しい考え方だと思います。
 利益を上げようとするならば、まず商品やサービスの付加価値を上げることを考えるべきです。そして、適正な価格で売れる仕組みをつくることです。
 残念なことに最近は、付加価値を高めるという大変な労力のかかる仕事をおろそかにして、コスト削減という手っ取り早い方法に走っているように思えます。リストラなどは、その最たるものでしょう。
 伊那食品工業では、これまでリストラをしたことがありません。本来リストラというものは、最後の最後になって、どうしようもないという状態に陥った末に、やむなく手を付けるもので、それは経営者として持つべき最も基本的な倫理観と言えるのではないでしょうか。

2012-12-24 10:03:09

休日数日本一、報連相禁止、命令禁止、70歳定年、全員参加の海外旅行…未来工業はへんな“きまり”ばかり。だけど、だから、儲かるんだよ。

2012-12-07 09:52:00

ビジネスブックバンク vol.206 2012.12.02 SUN

■■■今週の書籍紹介

・「考える力」を身につける本
・出口 汪 (著)

■■■ 本書の目次  

はじめに
第1章「本物の勉強」は楽しい
第2章「論理力」を身につける
第3章 一生忘れない「記憶術」
第4章「読解力」を深める
第5章「想像力」と「創造力」で賢い頭をつくる
第6章 実践で「考える力」を身につける
第7章 実況中継「出口の現代文講義」
第8章 考える力が100%身につく「ノート術」
おわりに

さて、本日ご紹介する一冊は、カリスマ講師としても有名な、東進衛星予備校講師、デジタルスクールS.P.S.主宰
株式会社水王舎 代表取締役、出口 汪さんの、『考える力」を身につける本』です。
執筆した受験参考書は、累計部数600万部超となっており、僕も、何冊も出口先生の本を持っています。
特に、『現代文講義の実況中継』シリーズは、受験生でなくとも、何度も読み返したいすばらしい一冊です。
本を読む前に、本の読み方を学べる最高の一冊でしょう。
話をもどし、何かと難しいと思われがちな論理(ロジック)ですが、それが理解・体得できることであり、努力次第で
身につけられるものだということがわかると思います。
なぜ、そう思えるかというと、本書はノウハウやフレームワークを提唱するものではなく、その根底に横たわっている「考え方」を学べるからです。
僕は、社会が成熟化かつ高スピードで変容している日本では、これまでの歴史に学びながら、今の時代にフィットした思考をすること、自らも変容していくことが、今求められていると思います。
なぜなら、変化に対しついていけなければ、衰退が待っているからです。
たとえば、戦後は欧米の知見を翻訳し伝えることが重要でした。
これからは、高齢化社会に世界最初に突入するように、日本が先導するイノベーションや、文化創造、または、異質なもののすり合わせによる価値創造が求められるでしょう。
そんな外部環境の変化に対し、今自分はどう変容し、時代が求めるものとの重なり合う部分を増やしていくか、これが、ビジネスパーソンとして生きていくためにより重要になっています。
そのためには、細かいノウハウなどのアプリケーションソフトなどの前に、まずはOSとして「考え方」を身に着けるのが定石です。
土台なき上に、家は建ちません(建っても崩れます)。
そして、その土台だけは、不易流行の不易の部分、つまり永遠に変わらないものです。
本書はそれを学ぶのに最適な一冊だと思います。

■■■チェックポイント B B B C H E C K P O I N T

■論理力や感性は「後天的に身につけられる」

あの人は頭がいい。
私は頭が悪いから、ダメだ。
あの人は鋭い感覚の持ち主だ。
私はそんな才能はない。
このように、頭の善し悪し、感覚は、先天的なものであり、努力だけではどうにもならないものと思われがちである。
実は、これも大きな誤解なのである。
たとえ頭の善し悪しは先天的であっても、論理力は後天的に学習・訓練によって習得すべきものなのだ。
そして、頭の善し悪しなど実生活では何の役にも立たない。
人生の鍵となるのは、論理力の有無なのである。
感覚も同様で、何でも「明るい」「暗い」といった粗雑な言葉で満足している人をとても鋭い感覚の持ち主とは思えないが、とにかく感覚は生まれつきであって、感性もまた、後天的に学習・訓練によって獲得すべきものなのだ。
なぜなら、理由は明らかである。
論理力も感性も、日本語の運用能力の問題であり、そして、私たちは言葉を後天的に習得しているからである。
あなたも日本語が喋れるならば、学習・訓練によって必ず「論理力」を身につけ、鋭い「感性」を武器とすることができるはずである。

■文章を「速く、正確に」読み取る方法

論理的に正しいとは、それがイコールで結ばれているということである。
数学でも、
 3X×4=24
 3X=6
 X=2
が正しいのは、すべてがイコールで結ばれているからであって、どこか1ヵ所でもイコールが成り立たないとき、それは論理的に間違っているのである。
物理でも、化学でも、事情は同じだ。
すべてのものとものとが引っ張り合っているなら、月と地球も引っ張り合っているし、リンゴと地面も引っ張り合っている。
だから、リンゴは木から落ちるのである。
ここでも、すべて、「イコールの関係」が成り立っている。
文章においても、まったく同じことがいえる。
英語でも、現代文でも、古文でも、筆者が筋道を立てて説明する限り、必然的にイコールの関係で結ばれているはずなのに、私たちは文章を読む際に、そのことをまったく意識しないでいる。
現在、速読法といわれるものがもてはやされているが、その大半は、要は<とばし読み>ではないか。
だが、それではせっかくの文章がもったいないし、少なくとも入試においてはまったく役に立たない。
論理的な文章である限り、論理を追っていけば、<とばし読み>などしなくても、ずっと速く、しかも正確に読めるのである。

■「覚えるためのノート」のつくり方

人間は自分の手で書いてみて、初めて物事が理解でき、頭の中で整理されることがある。
歴史はあくまで教科書をバイブルにすべきだが、ただ漠然と読むだけでは、結局いつも同じものしか目に入らず、記憶からこぼれ落ちてしまうものが出てくるのだ。
なぜ、書くことによって整理できるのか?
「対象化」という評論用語がある。
物事を、距離を置いてとらえることをいう。
たとえば、あなたはいま自分の顔が見えるだろうか?
見ようとする自分を、「主体」という。
そして、主体と「客体(見られるもの)」との間に距離がないとき、物事は客観的にはつかめない。
自分の顔を見ようとするなら、鏡を見るべきである。
鏡の中の自分の顔は、距離を置いたものである。
これを「対象化」といい、その結果、初めて私たちは自分の顔を客観的に判断できるのだ。
そして、ノートというのは、自分の理解を対象化する武器なのだ。
だから、自分の考えを整理し、それを改めて距離を置いて眺めることができ、記憶が可能になるのである。
よく、ノートに書くのは時間の無駄だと思いこんでいる人がいるが、理解し、整理することは、記憶するのにもっとも有効な方法だし、書くことによって実は記憶しているのである。

■「視点」「価値観」を、自由自在に変えるテクニック

「弁証法」というと、なにか非常に難しいイメージを人に与えてしまう。
さまざまな弁証法哲学があり、そういったイメージが頭にあるのだろうが、弁証法という考え方自体は難しいものではない。
たとえば、対立命題があるとする。
西洋と東洋、右派と左派、男と女、何でもいい。
これらはそれぞれ一長一短である。
そのどちらかを選ぶのが二者択一、両者を併せるのが折衷。
だが、正反対のものを併せたところで、プラス・マイナス・ゼロ。
無難だが、両者の特色も失われがちである。
それぞれが欠点を補い合い、長所を生かし合うことはできないのか。
この発想がすでに弁証法なのである。
それには、両者を高い地点に押し上げることが必要である。
そこで、弁証法のことをアウフヘーベン(止揚)と呼ぶこともある。

■弁証法=対立命題を高い地点に押し上げて、統一を図ること

たとえば、お互いに意見が対立し、どちらも譲らなかったとする。
それぞれが自分の視点、価値観でものをとらえている限り、どちらも自分が正しく、相手に非があるのである。
視点を変えない限り、対立が解消されることはない。
そんなときは、いったん自分の視点や価値観を捨て、相手の視点で同じテーマを考えてみる。
レトリック感覚を使うのである。
すると、いままで見えなかったことが見えてきて、自分の考えだけが唯一の真実だとは思えなくなる。
だが、やはり自分の視点に立ちかえると、自分の判断が誤りだとは思えない。
そんなとき、思い切って一歩踏み込んでみる。
自分の考えは譲れない。
相手の立場に立って考えれば、それも理解できる。
ならば、両者をより高い地点で合一できないか。
こういった発想が弁証法なのだ。
会議の席でも、しばしば意見が対立することがあるだろう。
そんなときに、弁証法を思い出してほしい。
あるいは、夫婦げんかをしたときでも、いったんは相手の立場でとらえ直し、自分の考えと高い地点で合一する。
けんかになるのは、互いに自分の立場や価値観に固執するからである。
そういった意味では、頑固になるのはよくない。
頭はもっと柔軟に、絶えず自由に視点を変えられるように、普段から鍛えておくことだ。
成功する人は、日常においても柔軟な思考ができる人だ。
そうなるためには論理を絶えず使ってみることである。

■真の独創は、模倣から生まれてくる。

人の一生は短い。
学問の世界では、一人の人間が発見できることなど知られている。
学問の世界の話をしよう。
たとえば、Aという人が大変なことを考えつき、それを論文という形で書き残したとする。
次に、Bという人が同じことを一から考えたら、Aが辿り着いたところまでいくので精一杯ではないか。
そうなれば、学問に進歩などあり得ない。
BはAの考えたことを理解し、その過程において、Aの正しさを検証しているのだ。
そして、Aの考えたことを理解したとき、Bは次の一歩先を考えつくのである。
この新たな一歩は、学問の進歩に寄与する。
だから、真の独創たりうるのだ。
次に、CはBの考えたことを理解する。
その過程で、AとBの考えを検証しているのだ。
その結果、次の一歩を考えつく。
こうして、物事は少しずつ進歩する。
そして、Aの考えたことも、Bの考えたことも、何度も何度も確かめられ、やがて定説となっていく。
だから、真の独創は、先人の考えの模倣から始まるのである。

2012-12-03 11:45:38

BBB BUSINESS BOOK BANK ビジネスブックバンク Vol.205 2012.11.18 SUN

大量のタスクをこなす際に参考になる一冊をご紹介します。
東京大学医学部附属病院の現役医師、森田敏宏さんの、『東大ドクターが教える、やる気と集中力の高め方』です。
森田Drは、2008年まで東大病院の心臓カテーテルのチーフを務め、カテーテル手術の件数を年間50例から600例まで、なんと10倍以上に増やされたという実績をお持ちです。
本書は、そんな東大Drが、集中力を科学・医学的視点からやる気と集中力を高めるコツを教えてくれる一冊です。
やる気がでない、集中力が上がらない、今日もだらだらと過ごしてしまったと自己嫌悪に陥る・・・。
そんな経験をしたことがある方は僕だけではないはずです。
では、どうすればいいのかというと、「集中力の上げ方」を知っていればいいだけです。
具体的には、「時間を測り現状を知る」「作業を分解する」、「一つひとつに分解し、集中して取り組む」、「結果が上がることでよりモチベーションが上がる」というプロセスを踏んでいくのですが、これが本当に効果的です。
僕たちに与えられている時間は1日24時間ですが、それをどう使い、何倍の効果を上げるかはやり方次第です。
ですので、その大切なファクターである、モチベーションや集中力を高める方法を知っておかない手はありません。
では、本日もどうぞお付き合いくださいね!

■■■ 本書の目次  
CHAPTER1 時間とストレスの関係
CHAPTER2 脳とやる気と集中力
CHAPTER3 ワンステップ?メソッドをはじめよう
CHAPTER4 目標を達成するために必要なこと
CHAPTER5 目標を達成する具体的なプロセス
CHAPTER6 やる気と集中力を高める休息の取り方
CHAPTER7 健康な心身がパフォーマンスを支える
CHAPTER8 勉強のベース力を底上げする本の読み方
CHAPTER9 ワンステップ仕事術を実践しよう

■■■チェックポイント B B B C H E C K P O I N T
■生産性はやる気と集中力で高まる
どうすれば混乱に陥ることなく、生産性を高めていくことができるのでしょうか?
そのキーワードは、やはり「やる気」と「集中力」です。
ゼネラル・エレクトリック社ホーソン工場での有名な実験の話があります。
ある年、専門家グループが労働者の生産性を向上させるため、この工場で様々な労働条件や労働環境を設定して実験を行いました。
実験対象として、モーターを組み立てる生産ラインで働く女性たちが選ばれました。
調査員は彼女たちに「最も生産性を上げ、なおかつミスを最小にするための最高の労働条件を探す実験である」と説明しました。
まず、製造部門の照明を明るくして実験しました。
2~3日もすると生産性が上がり、欠陥製品が減りました。調査員たちは「わが意を得たり」と喜びました。
そこで今度は、照明を暗くし、生産性の違いを調べようとしました。ところが驚いたことに、生産性はさらに上がってしまったのです。
予想外の結果に、「これはどうしたことか」と、他の労働条件でも実験を続けました。
騒音の違い、室温の高低、作業員の配置と作業順の変更…。
ところが、どの条件でも実験前より生産性が向上するという結果が出たのです。
これはいったいどういうことでしょうか?
すべての実験が終わり、調査員たちは実験に参加した女性たちを集めて結果を説明した後、彼女たちに質問しました。
「労働条件をいろいろ変えたにも関わらず、生産性が上がり続けたのはなぜですか?」
すると彼女たちから、予期せぬ答えが返ってきました。
「私たちは何かに選ばれたこともないし、単なる労働者以上の扱いを受けることもありません。ですから、この実験の被験者に選ばれたことが誇らしかったのです」。
彼女たちは、実験対象に選ばれたことを誇りに思い、高い「やる気と集中力」を維持して仕事に臨んだのです。
その結果、実験条件がどのように変わっても、効率を落とすことなく、高い生産性を維持し続けることができたわけです。
私たちがしばしば陥ってしまうのはこの逆パターンです。
どんなに恵まれた環境で、どんなにきちんとしたスケジュールを立てても、根本のやる気と集中力がなければ生産性は上がりません。
時間は刻一刻と過ぎてしまうのです。

■ステップ数の多さも時間を測ると大したことはない
何かの作業に取りかかるまでのステップ数が多いと、面倒くさく感じる、ストレスが増えるという話をしました。
しかし、ステップが多いことと、それに要する時間は必ずしも比例しません。
ここでも心理的時間と物理的時間の乖離がしばしば見られます。
たとえば、空港でのチェックイン。
ポケットに入っている金属類を出してトレイに載せなければいけません。
私の場合、ポケットにいろいろなものが入っているので、いつもすごくストレスに感じていました。
財布、手帳、鍵、携帯、名刺入れ、腕時計、そしてカバンからはノートパソコンを出して…。
ストレスの原因は、まさしくステップ数の多さにあります。
ところが実際に所要時間を測ってみると、1分程度しかかかっていないことがわかりました。
それまでは、自分の心理的時間は5分位と見積もっていたのです。
物理的時間に対しておよそ5倍の体感時間。それほど長く感じられたわけです。
しかし、実はたった1分しかかかっていないということが一度わかると、まったくストレスではなくなります。
むしろ、ワンステップ・メソッドでいかに速く処理するかを目指すと、逆に楽しくさえなるから不思議なものです。
このようにステップ数が多くても時間はたいしてかからない作業というのは沢山あります。
あなたもそれをたくさん見つけてストレスを減らしましょう。

■目の前の一歩に集中する
オリンピックの水泳で2大会連続金メダルを獲得した北島選手。
彼のメンタル面の指導をした脳外科医の林成之先生によると、水泳選手は「もうすぐゴールだからスピードを緩めていいよ」という指令を脳が出しているということになります。
そこで、「泳ぎ終わって自分のタイムを確認するまで気を抜かないように」
と指導したところ、選手のパフォーマンスが向上したそうです。
これは、仕事でも勉強でも同様です。何ごとも先をあれこれ考えるとパフォーマンスが低下します。
本章の冒頭でご紹介した若手医師のように、ステップ数の多さに目がいくと、「複雑だ」「難しい」「大変だ」ということになったり、あるいは「もうちょっとで終わりだ」と余計なことを考えたりすると、パフォーマンスが落ちてしまうのです。
このことからもわかるように、どれだけステップ数が多いことでも、パフォーマンスを上げるためにはとにかく目の前の作業に集中することです。

■プロジェクトを分解せよ
時間管理やスケジュール管理の本には必ず「やることリスト」や「ToDoリスト」を作りましょうと書いてあります。
ところが、ここにも注意しないといけない点があります。
それは何でしょうか?
たとえば、あなたの手帳のやることリストに
 1)取引先に連絡する
 2)TOEICの準備をする
 3)新しい企画の立案をする
と書いてあったとします。
1)の「取引先に連絡」はすぐに行動に移すことができます。
このように具体的な行動を作業あるいはタスクと呼んでいます。
それに対して、2)の「TOEICの準備」とは、具体的に何をすればいいのかわかりません。
このようなものは複数のタスクが集積したもの、つまり「プロジェクト」に分類されます。
このように、具体的なタスクと漠然としたプロジェクトが混在している時点で、あなたの頭の中は混乱してしまいます。
そこでどうするかというと、プロジェクトの中身を具体的な行動に分類する必要があるのです。
TOEICの準備というプロジェクトを具体的なタスクに分類してみましょう。
まず書店に行って参考書、問題集を購入する。これらを進めていく計画を立てる。
つまり、「問題集を1日2ページ解く」「ヒアリングの教材を1日10分聴く」といった「具体的なタスク」に分解するのです。
こうして分解されたタスクを日々の行動に落としこんでいけばいいのです。
あとは、これらのタスクを一つひとつこなしていく。
そうすれば、あなたは一歩一歩、成功へと近づいていくのです。

2012-11-26 11:20:51

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