ウェブの時代になり、全ての企業体はメディアを持つようになった。ではその効果を最大化するにはどうするべきか?を問うた指南本。…と書くと「こうすれば成功できる!」的なハウツー的内容を想像するけれども、昨今話題のソーシャルメディアを使ったマーケティングに必勝パターンなどないし、トレンドは時々刻々とかわっていくものだから、本書はさまざまな事例紹介を通じてあくまでも「気づき」を与えることを目的として書かれている。
気になった部分をいくつか紹介。
この手の本で必ず力説されるのは、「熟考よりも実行すること」。本書でも、「ウェブは常にプロセスなのです。まず、始めること。枠組みさえできたら、次に洗練させていく。机の上で企画書をこねくり回している暇があれば、まず立ち上げて次々と進化させながら知見を蓄えていくのです。あとは、誰がやるのかというリソースの問題だけです」(67)と述べている。もっとも、そのリソースの問題こそが実行を妨げる最大の要因ではあるのだけど…。
そして、「分配」「自然発生」というキーワード。
「(メディア化を志向する企業にとって必要なことは)シェアアウトであること。つまり、分配していく。この分配を生み出すような仕組みを作る必要があります。…そこはスポンティニアスな世界です、スポンティニアスというのは自然発生という意味です。ですから、コントロールできません。しかし、コントロールできないということを極度に恐れず、トライ&エラーから学ぶことも必要だと思います。…いかに狙ったクラスターが自社のメディアやそのコンテンツを発見し、自分たちの友人に推薦してくれるのか。そこから誕生したコミュニティをモデレート(調停)し、支援してあげます。そして、それら全てが持続するような循環型の仕組みを目指したいものです」(271-272)
企業側からすればネガティブな発言を見るに付け、どうしても情報を統制・検閲しようと思いがちだけど、それは決してプラスに働くことにはならないという。肯定的に評価してくれるユーザーやコミュニティを支援し、トータルで見てプラスな方向に持って行くということが大事だと再認識。
最初読んだ時は事例紹介ばかりで、小林氏の本にしてはちょっとキレ味に欠けるかなと思ったけど、こうしてエッセンスを取り出してみると中身は相当に濃い。
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Tomokazu Kitajima