綾辻行人著の「囁き」シリーズ第3弾。
「館」シリーズと異なり、各作品ごとの関連性が低い「囁き」シリーズ、共通点としてあげられるのが誰かの想念と思われる丸括弧でくくられた囁きが無造作に、あるいは強引にちりばめられ、独特の世界観と様式美をたたえていることだろう。リフレインのように囁かれるそれらの言葉は、本作で言えば「おじぞうさん、わらった」というふしぎな文言であり、「ねえ、遊んでよ」という仲間はずれにされていた子供の声であり。結末までにおおよその予想がつくが、その予想を思わぬ形で裏切る真相が隠されていたり、このあたりは半ば強引とすら思えるが、綾辻流のミステリの醍醐味でもある。
いくつか提示されたまま解決していない、謎というほどのこともない引っかかりのようなものが残るのが残念といえば残念。大傑作、とまではいえないが、綾辻行人らしい良質のミステリであることは間違いない。
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Atsushi Egi