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綾辻行人によるシリーズ第1弾。
館シリーズから入ったものとしては、いわゆる綾辻節とでもいうようなねっとりとした、独特の文体が好みであるのだが、本作はどちらかというとライトな書き味で、綾辻行人らしさを抑えて書かれている。しかし、その内容は、これまたいかにも綾辻行人好みの本格ミステリで、特にどうやっての部分がなかなかに奇抜で興味をそそられた。
事件は新興宗教とその教主家族にまつわる人々の間で展開する。新興宗教家の所有するマンションの屋上で首と片腕がない死体が発見され、2ヶ月ほど前に亡くなった(殺された?)教主に変わって新たな教主となった前教主の夫であることが判明し、そのマンションに住んでいた息子が逮捕される。しかし、すべての状況証拠が息子に不利であることに不審を感じた主役の一人(主人公と呼んでいいのか?)がその謎を覆すべく行動に出る。
犯人とそのトリックが提示されたあと、もう一つのどんでん返しが控えているあたりはさすがという感じであった。Amazonの書評では厳しい意見が多いが、僕のようなディープでないファンにとっては、えっ、そっちなの?という驚きもあり、大変楽しめた。綾辻行人テイストの薄い文体ながら、綾辻行人らしい仕掛けがふんだんに盛り込まれているのも良かった。早く続編が読みたくなる。
文庫巻末の解説にも言及があったが、法月綸太郎の「誰彼」と共通するモチーフがほぼ同時期に提示されているという点も興味深い。綾辻氏も本人曰く寡作であるが、法月氏も大変な寡作作家であるという点や京大のミステリ研究会出身という点など、この二人には共通点が多い。いずれも本格ミステリにこだわった作品を手がけ、僕にとっても大好きな作家である。

2012-03-26 11:08:33

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