綾辻行人によるスタンダードな本格推理ものシリーズ第2弾。
今作はいわゆる「読者への挑戦」が織り込まれるなど、いわば館シリーズに代表されるようなものとは一線を画した本格推理ものとして書かれたものだ。確かにあらゆる所に伏線が張られ、それぞれが意味をなし、最終的に納まるべきものが納まるべき所にきちんとはまる、パズラーとしての側面も余すところなく示されている。
物語は6年前、カナウと深雪が出会うきっかけとなった事件からはじまる。殺された二人はいずれも長い黒髪を切られており、それがなぜなのか、というところがすべての謎のキーになっている。果たして6年前の事件は今回の事件にどう関わってくるのか。10年ぶりに集まった顔なじみの仲に殺人犯がいるのか、どうなのか。
相変わらずカナウは主役級の活躍をせず、双子の兄ヒビクにいいところをすべて持って行かれる、警視庁の刑事らしからぬ扱いなのがなんだかもの悲しい感じはあるが、そういうキャラクターなので仕方ない。一方、その名探偵ぶりも冴え渡るヒビクはいったいなぜそんなにも頭が回るのか不思議なくらい、鋭い洞察力を持っていて、いつまでも大学に籍を置いているのも説明がつかないほどだ。
綾辻氏はこのシリーズの第3作を書くかどうしようかと思っているうちに10年以上の時が過ぎてしまったと述べているが、個人的にはいわゆる綾辻節の炸裂する作品とは別な趣のある本作のような作品も書いて欲しいと願わずにいられない。
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Atsushi Egi