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綾辻行人による、非ミステリの傑作。
本作では「痴呆」特に「アルツハイマー」をベースにした「白髪痴呆」という架空の病気に冒された母親と、その遺伝性におびえる息子である主人公を軸に展開する。途中までは主人公の精神的な揺らぎというか、破綻というか、壊れていくさまが、まさに自分がそうなったとしたらというリアリティとともに迫ってくる。母方の祖母も同じような病気で亡くなったと聞いた主人公は、やがてばったり出会った幼なじみとともにその真実を探る旅に出る。
終盤の展開により、ミステリではないにもかかわらず、綾辻ミステリの醍醐味を実感できるくだりも用意されているし、ミステリのような論理的な展開の中に非論理の展開が仕込まれ、小説でしかあり得ない設定が当然のように帰結し、すべての物語が繋がってくるあたりはさすがと言うべきか。
ホラーの要素もありつつ、ミステリの要素もありつつ、ファンタジーの要素もありつつ、いわゆる蘊蓄系小説の要素も備えている、でも綾辻行人らしさがふんだんに盛り込まれた極上のエンターテインメント作品だ。

2012-04-27 16:57:14

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