類似本や関連本が出版されるほど話題になったフリー経済についての解説本。
著者はワイアードという雑誌の編集者であり、優秀な記者でもあるが、反対論をはねのけながらフリーの時代の到来を高らかに歓迎する。インターネット関連企業だけでなく、音楽や新聞といった著作権が絡むものについても考察を行い、無料にすることによる有効性を説く。さらに、フリー経済の先駆者として中国の模造品をあげ、消費者は本物と偽物を識別する目を持ち、裕福でないものが模造品を、裕福になれば本物を買うとする。
しかし、これらは余りにも楽観すぎないだろうか。ホンダの工場で生産される部品を盗み、あるいはその工場自身がその部品でコピー商品を作り、格安で売る強かさを前にしても同じことが言えるのだろうか。
あるいは、音楽などはCDやファイルベースでほぼ無料同然で売り、コンサートや関連グッズで売れば良いとするが、コンサートといった手段の取れない小説家などが果たして作品をフリーで配布できるのだろうか。
いずれにせよ、世の中はフリーへと進んでいる。自分たちのビジネスは今後どうあるべきか、深く考えさせられる。
Atsushi Egi