and more.
新田次郎による山岳小説の傑作の下巻。
その表情や無口な人柄から誤解をされやすく、何かと孤立しがちだった加藤文太郎が、冬山登山のビバーク中に雪洞に吹き込んできた粉雪を見てディーゼルエンジンの燃焼室の改良を思いつくなど、登山家としてだけでなく、技術者としても実績を残し、やがて当時の技術者としてはトップクラスの技師にまで若くして上り詰める。一方、私生活では花子という伴侶を得て、初めて一人ではないことのすばらしさに気づき、ついに、次の冬山で山をやめることを決意する。
この最後の登山は物語の上では初めてパーティーを組んでの冬山登山、ということになっている。実在の加藤文太郎が実際にそうだったかどうかはわからないが、単独行の加藤と呼ばれていたことから、パーティーを組んでの登山はほとんどしていないようだ。こうした、複数人での登山についての経験の浅さがこの登山における悲劇を呼んでいく。経験に培われた独特の装備、独特の食事法法などを編み出し、慎重な準備をすることで冬山においても常に生還してきた加藤は、その最後の登山において他者の判断を優先させてしまい、ついには命を落とす。この最後に至るまでが淡々と綴られ、それがまた悲壮感を漂わせている。
これまで登山の経験もなければ、冬山に登りたいとも思ったことはないが、少なくとも夏の名峰と呼ばれる山に登ってみたくなる、そんな気分にさせられる。当然、単独行なんて無謀なことは出来ないけれど。
下巻では結婚により人との関わり方を学び、生きる喜びを見出したのだと思います。子供が生まれるた事で更に彼の心は溶け、周りの人達との関係をより円滑に進めることができるようになります。人を拒絶するのではなく受け入れ、なぜこのような態度に出ているのかを考えてあげる事ができる様になります
2011-04-23 11:16:37Wow! ノートはまだありません
Atsushi Egi