近年、「出版危機」という言葉がまるでブームか何かのように叫ばれている。著者はこの現象を「活字離れ」という読者の視点とは切り離し、「出版業界の危機」という出版流通の視点から論じている。近代を起点として、我々が通過してきた道筋の中に、危機に対する対応へのヒントを探している。
論じる内容は、大きく分けると、1.出版流通体制の骨格、2.流通メディア論である。具体的に言うと「中央における取次の会社や組合の成立」「地方における有力書店の役割」「すさまじい発送戦争」「流通した本の種類」「円本や赤本の誕生」「棚の変化」「ジャンルの成立」「取次の変化」「インターネット書店の台頭」「マニアの嗜好に頼ることの功罪」となっている。
この本はもともと修士論文として書かれたものである為、とにかく難しい。そして、読者の視点からは切り離している為に分かりやすい結論はない。ただ、「本の陳列の仕方の変化からジャンル分けが生まれた」という点は興味深かった。「客が店主に希望する本を告げ、店主がそれを引っ張り出してくる」という畳敷や板敷の坐売りから、客が自由に本を選ぶことのできる開架式書棚へ変化する時期があったのだが、それを可能にする為に、客側にそれ相応の知識があることとともに、書店側にも分かりやすい陳列を行う必要性があった為に『ジャンル分け』が生まれたそうだ。
話がズレたが、この作品は、売る側からの視点を知りたい人にオススメする。
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Hiroko Kashimoto