「お名前をどうぞ」「福田幸夫だよ」「ご自宅の住所は」「住所は、練馬区桜台六丁目十四番地」
実在する桜台六丁目十四番地に「幸福荘」を当てはめてみる。幸福荘の幸夫。この小説にはメタファーが多く、実在の練馬に重なった別空間でのできごとが映されているようだ。火星年代記的手法を感じる。
高田馬場駅で電車をおり、改札を出て早稲田通りを落合方向へ向かう。信号を二つ過ぎると左に折れるわき道があり、そこを曲がってまた二十メートルほど歩く。
途中にあったバイト先の本屋は今では「吉野屋」だ。街の移ろいを思いながら過去を現在を行き来している。
向かう先は当然西武新宿線の井荻駅、歩道橋をわたるとすぐ駅前の商店街で、まだ弁当屋とコンビニしか店をあけていない商店街を、急ぐ様子もなく駅へ向かう。(中略)そうやって二十分も走り、電車は高田馬場駅につく。
・・・各停で出勤してるのかな。環八も様子がかわり歩道橋でなくなったかも。
場所は西部新宿線の井荻駅から環状八号線を越えた辺りで、駅前にこそ定番の商店街が広がっているものの、あとは何もない住宅地。桜台の付近よりひとつの区画は広い気もするが、それだって住宅のすべてが新建材の安普請で、雨のせいか街路もアパートもブロック塀も、すべてが寂れて見える。
2011-06-12 07:13:15 153p池袋駅の西口も午後の三時をすぎて夜の支度が始まったのか、雑居ビルの間を酒屋のバイクやおしぼり屋のワゴン車が出入りする。
これはI.W.G.P.シリーズ(石田衣良)の舞台に出てくるところだ。作家の年代が近いのか、街の描写に重なるところがあるように感じる。
千川通りと目白通りにはさまれた一画は、夜になるとその相貌を一変させる。昼間は煤けた色に並んでいるだけのビル壁が赤や青の灯に装飾され、街路にも路地にも飲食店の電気看板が渦を巻く。子どものころから母親に出入を禁止されていた街ではあるが、そうでなくとも元々ボクさんには無用の場所なのだ。
2011-06-12 07:05:29 119p駅ビルから練馬一丁目、練馬銀座通りを歩いて大門通り商店街を越え、幸福荘への路地は曲がらず、廃業した電気屋と時計屋の前をすぎる。
桜台と練馬の間は短い。大門通りの商店街の北側にはたくさんの小さなアパートがある。幸福荘はその中のひとつなのだろう。地図を持って読みたい。
この通りは通称を練馬銀座といい、練馬の駅から桜台の駅まで細長くつづいている。
練馬駅の北東の商店街が出てくるだけで俄然読む気が増してくる。練馬のウリモノはアニメだけじゃない。小説やマンガの舞台になる「東京の田舎」なのだ。
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Michi Kawahara