7例の道迷い遭難事故について,遭難者本人へのインタビューや事後検証を踏まえ解説・分析している。記述されているいずれの道迷い遭難についても,(1)道に迷ったと感じたときに引き返すチャンスはあったのに引き返さなかった,(2)この道はきっとあの場所につながっているだろうという本人の思い込み,(3)とにかく下れば良いという気持ちで沢筋・谷筋を下ってしまう,(4)予想しなかったアクシデント(滑落,骨折,凍傷,コンタクトレンズの紛失など)が発生し正しい判断ができなくなる,(5)人の忠告を聞き流す,(6)救助されたのはたまたま運が良かっただけである(セオリーどおり尾根筋に登り返し自力下山できた1例を除く)などの共通性がある。そして6例は単独行である。
山で道に迷ったときには決して谷筋・沢筋を下ってはいけない,との掟を誰もが知っているにもかかわらず,遭難の現場では正しい判断ができなくなる事例が詳細に記述されており,登山者は誰でもこのような負のスパイラルに陥ってしまう危険性があると警告している。
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Takayuki Kashima