戯曲の中のセリフを紹介するというよりは、文庫版あとがきで著者本人が言っているように「古今東西名作戯曲解説」といえる内容。
松尾スズキ「マシーン日記」について、「癒し」では救われない現代日本人に「許し」を積極的に言い放つ新しさが松尾スズキの新しさだとする冷徹な洞察力には目から鱗が落ちました。
アラン・エイクボーン「リラティブリー・スピーキング」、アリストパネース「女の平和」、別役実「赤ずきんちゃんの森の狼たちのクリスマス」、安倍公房「友達」などのこれまで知らなかった戯曲の解説では、鴻上尚史の深読み、文章の巧みさに思わず引き込まれ、舞台を見ずにはいられなくなってしまいました。
演劇というものは、映画やテレビなどのほかのメディアと違って、スポンサーの修正も入らず、時間差もなく、作家の思いが直接届く、奇跡的に時代の息吹が丸ごと込められた作品になる可能性の一番高いメディアだと鴻上尚史と定義しています。
この「名セリフ!」で紹介された戯曲は、そういった作者の思いや時代の息吹が濃厚に込められた傑作ばかりということもありますが、私は演劇の奥深さと魔力に取りつかれてしまったかもしれません。
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Yoshitaka Taniguchi