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古代ギリシア・ローマにおける「対話の術」を起源とする「教養」とは、「未知のもの」「私の常識に反するもの」に遭遇した時、それとどう向かい合い、自分のそれまでの認識の枠組みとの間でどう調整をつけていくかを学ぶ基礎訓練です。
その核にあるのは、言語によって情報を適切に処理する能力です。大げさに言うと、言語によって自分の世界を拡げていく能力です。そういう意味での「教養」は、時代や文化ごとにさまざまな形態があったとしても、知的な探究を続けたいと思っている人には不可欠です。
・西欧の学問の伝統における「教養」の本質→「知的な討論をするための基礎的な能力」「適切な根拠を示しながら自分の意見を示し、相手と理性的にコミュニケーションするための基礎訓練ができていること」
・「教養」理念の根源は古代ギリシアのポリスにある。ポリスは少数の「市民=自由人」たちの討論によって運営され、民主主義の原型となったとされる。ポリスの伝統を継承した、ローマなどのイタリア都市国家では、民主的な討論という形で国家の運営に参加する「市民=自由人」が身につけておくべき基本的な素養、技術が体系化されるようになった。これを、「フマニタスhumanitas」という。これは、humanityの語源であり、複数形humanitiesは人文科学という意味だが、語源のフマニタスが「人間らしさ」「人間らしく振る舞うための技術」を意味することから、人文科学は「人間らしさ」を身につけるための学問・知識といえる。
・「自由七科」:ローマ末期にフマニタスに必要な科目が整備された。具体的には、言語に関わる、文法・修辞学・弁証論(論理学)、数学的な思考を必要とする、算術・幾何・天文・音楽。
・中世の大学では、専門(神学・法学・医学)の前の基礎的な科目として、自由七科が導入された。
・ルネサンスとは、キリスト教の教義の枠から自由に「フマニタス=人間らしさ」の理想を探求する営みを再開することであり、その本質は、古代のフマニタスの研究を起点に、いかにしたら「人間らしさ」、人間らしい思考・コミュニケーション能力を獲得できるかを考える文化運動だった。
・啓蒙主義では、人間には生まれつき理性が備わっており、教会や領主に妨害されなければ、人間性はどこまでも発展していくという考えが支配的だった。
・新人文主義:人間性は素地として各人に備わっているにすぎず、何もしなければ、自律した人格へとは成長できない。生まれ育った文化の中で、様々な要素を吸収しながら、自己を「形成=形態化bilden」しなければならない。文化を継承する媒体であり、思考様式も規定する言語が、人間性形成において決定的な重要な役割を果たす。言語と内面の発達を密接に結びつけ、古代ギリシア人に倣い、ドイツ語を洗練させながら、各人の内面的な人格を総合的に陶冶していくことに力を向ける。
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Hiroki Hayashi