月収労働者が読んだら戦慄まちがいなしの本。とある偉い学者さんはかつて、資本主義社会は資本家に搾取される労働者の“窮乏化”を必然的にもたらすと語っていた。経済成長と中流階級の増大とともにに、この「窮乏化理論」は誤りであるとされたが、ここにきてこの“貧困化”という言葉、妙に真に迫ってくる。
「ホワイトカラーを脅かしているのはオフショア(海外委託)だけではない。おそらくすべてのホワイトカラーにとって最も大きなストレスとなっているのはレイオフであろう。……今日では、(かつては「一時解雇」を意味していたにすぎなかった)レイオフは永久解雇と化した。いったん人員削減の対象になったらそれっきりで、……元の会社で働く可能性はなくなった」(62-63ページ)。
誰もが思っていることを端的に言うものだ。
自分の周囲でもよく聞く話だが、硬直化した人事制度の中で身動きが取れなくなっているベテラン〜中堅社員は苦悩が多い。彼ら・彼女らの多くは家庭を持ち、子どもらまだ幼く、パートナーも現場復帰に至っていない。いっぽう独身者は、不安定な将来を考えると子どもをもつことはおろか結婚すら考えられない。かくして少子化は必然的な帰結となる。レイオフにおびえながら働き、新しい職場を探すのも困難となると、改革の意欲にも乏しく現状の仕事にしがみつくだけの“もの言えぬ社員”となるのも当然。
仕事を自己実現の手段と割り切って給料度外視で働いても、結果を残すことができねばその先には(永久解雇という意味での)レイオフが待っている。
森川氏は打開策としてホワイトカラーのユニオン(労働結社)化を主張する。いかにも学者らしい結論だが、どんなに声高に叫んでも、当のホワイトカラーがそういう活動にプロジェしていくのは容易なことではない。なぜなら、論理的思考を重視するホワイトカラーは、失職の危険を冒してまで労働運動に参画することなどできるわけなどないから。
ところで、TechWaveの湯川鶴章さんが今後のメディアの展望について「従業員の半分がクビを切られ、残った半分も給与が半減する。そんなイメージだ」と語っていた(http://goo.gl/2Ljj)。守りに入っていては生き残ることはおぼつかない。それは分かっているが、進むに進めず、退くに退けず、迷っているうちに時間だけが過ぎていくばかりの中堅社員の今日この頃。
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Tomokazu Kitajima