デザインイノベーション デザイン戦略の次の一手

しかし今のソニーは、1945年に東京通信研究所を立ち上げた井深大が、盛田昭夫とともに会社を興したころとは、大きく異なっている。井深と盛田が第一線を退いて、老い、やがてこの世を去ったとき、ソニーが失ったものは創業者だけではなかった。そのときに会社の魂も失われた。

ビジネスの世界では、失敗したくないと言う恐れが、成功したいと言う思いにまさることがよくある。多くの企業は失敗を恐れるあまり、合理的で、予測可能で、金のかからないやり方で成功をつかもうとする。しかし、現実の世界はそんなやりかたで成功するようにはできていない。

目先の利益にこだわった短期的な戦略は、結局は致命的な損失を招く。効率を優先し、独自性を蔑ろにするビジネスは、誰の得にもならない。そんなビジネスでは、やりがいのある仕事は生まれないし、ブランドの輝きも失われる。

消費者は「カリフォルニアデザイン」と記されたアップル製品を買うとき、ひとつの生活スタイルを買うことになる。
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