ビジネスブックバンク Vol.210 2013.1.6 SUN
■■■今週の書籍紹介
・土光敏夫 信念の言葉
・PHP研究所 (著, 編集)
■■■ 本書の目次
第1部 人生について
第2部 経営について1─「人の上に立つ」ということ
第3部 経営について2─「組織を動かす」ということ
第4部 行革について
さて、本日ご紹介する一冊は、石川島重工業(現IHI)、東芝の社長として両社を経営再建し、経団連名誉会長、産業構造審議会会長、臨時行政調査会会長等要職を歴任された、土光敏夫さんのことばをまとめた、『土光敏夫 信念の言葉』です。
僕は、経済的にも不安定さを増し、伊勢と出雲の式年遷宮が重なる今年は、経済も個々人の精神も、変革の年になると思っています。
そんな本年を迎えるにあたり、幾重もの困難を乗り切り、日本の改革・発展に尽した土光さんのことばを綴った本書は、年の初めに心のフレームを整えておくためにも最適な一冊だとおもい、ご紹介します。
■■■チェックポイント B B B C H E C K P O I N T
■艱難汝を玉にす
計画とは「将来への意思」である。
将来への意思は、現在から飛躍し、無理があり、実現不可能にみえるものでなくてはならない。
現在の延長線上にあり、合理的であり、実現可能な計画は、むしろ「予定」と呼ぶべきだろう。
将来への意思としての計画は、困難を受け入れ、困難にいどみ、困難に打ち勝つモチーフを、自らのうちにもたねばならない。
計画は、自己研鑽の場を作る高い目標を掲げ、何がなんでもやりぬく強烈な意思の力によって、群がる生涯に耐え、隘路を乗り越える過程で、真の人間形成が行われる。
艱難汝を玉にす。
そして艱難を自らに課し続ける人間のみが、不断の人間的成長を遂げる。
■日に新たに、日々に新たなり
これは湯王の銘である。
一つだけ座右の銘をあげろといわれれば、躊躇なくこの言葉をあげたい。
神は万人に公平に一日二十四時間を与え給うた。
毎日の二十四時間をどう使うか。
私は一日の決算はその日のうちにやることを心がけている。
きょうが眼目であるから、きのうの尾を引いたり、あしたへ持ち越したりしない。
きのうを悔やむこともしないし、あしたを思いわずらうこともしない。
このことを積極的にいい表したのが「日新」だ。
きのうもあしたもない、新たにきょうという清浄無垢の日を迎える。
きょうという一日に全力を傾ける。
きょう一日を有意義に過す。
これが、私にとって、最大最良の健康法になっているかもしれない。
■自分の肚をもつ
どの時代でも変化というものはある。
今、激動の時代なんていうけれども、ただ変化のスピードが速いだけだ。
昔カゴに乗った東海道五十三次が、今は新幹線でいくけれども、目がまわることはない。
問題は、その変化の裏側にある体制のでき方をどういうふうに静かに読みとるかだ。
だからそういう意味からいえば驚くことなんてないんであって、変化の速さの末梢的な現象にまどわされて右往左往していたら、それこそ間違いが起こる。
経済界も、もっとよくしっかりと将来を見通して如何にあるべきか、根本問題を押さえなければならない。
そして、そういう中で、自分の肚をもつことが必要なんだ。
■情報加工
風のつよい日、殿様が家老に「火の用心」をいいつけた。
家老は奉行に、奉行は与力に、与力は足軽に、逐次火の用心を伝えた。
その夜、火が出て城は丸焼けになった。
実は企業におけるコミュニケーションにも同じようなことが見受けられる。
「社長曰く」がそのままの形で各段階を素通りしてしまうのである。
各階段は上からきた情報をうのみにしないで、自分のことばに翻訳することが肝心だ。
一般的にいえば、トップは「目的(結果の明示)」、
エグゼクティブは「目標(目的への戦略)」、
ミドルは「方針(目標達成のための方法)」、
一般社員は「手順」といった形に変えていくのである。
このような情報加工がないと、馬の耳に念仏で終る。
■精鋭を育てる
少数精鋭という言葉がある。この言葉には、二つの意味がある。
一つは、「精鋭を少数使う」ということである。
そしてもう一つは、「少数にすれば皆が精鋭になりうる」ということである。
私は、後者の意味を重視したい。
前者だと、既にでき上がった精鋭を自分の手許に集めるということで、虫がよすぎるというものだ。
ところが後者では、今自分の手許にいる玉石混淆の人々を、玉にはますます磨きをかけ、意思はトレーニングによって玉に変えていこうということで、全員の能力を底上げすることを意図している。
そうしてこそ、真に人を育てることができるということである。
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Kouichi Msxturbo Tachibana