とかく「偽満州国」だの「傀儡国家」だのと言われ、評価されてこなかった満州国を、その当時の大陸の状況や世界情勢、日本の国力とその国家経営力などをもとに再評価しようとする本。
著者は台湾人なのにやたらと日本を肯定的に見る黄文雄氏なので、それを差し引いて読まなければいけないかもしれないが、満州国がアジアに与えた影響の大きさを再認識するに足る事例が、当時の状況と記録から例示され、説得力がある。
日本人が国家経営の中心を抑え、軍隊までも牛耳っていたというのも、そもそも近代国家経営のノウハウをその当時有していたのは、日中鮮などいわゆる五族の中では明治維新以来60年にわたる歳月を近代国家として体験してきた日本人に多いこと、近代国軍を有していたのも日本だけであることなどによるとする。
また、満鉄をはじめとする近代重工業・近代産業のインフラはソ連時代に整備されたものもあるが、さらに発展させたのはほぼ日本の投資によるものであることも数字を示して解説する。
中国やいわゆる進歩的文化人のいう妄言に惑わされず、数字や周囲の情勢をきちんと把握した上でどうだったのかを判断する上で、一つの参考にはなる本だと思う。
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Atsushi Egi