個人的に墨子は読んだことも勉強したこともないが、「墨攻」というマンガを読んだことがあり、非戦を掲げながらもその防御戦は特筆すべきものがある墨家集団というものには少なからず興味を抱いていた。
その墨家の思想を体系的にまとめたものか、と思いきや、著者の思い入れや主張が基本的には縷々語られ、かなりな回り道をした後に墨子ではこのように記されている、という流れで進む、非常に回りくどい本である。
脱線する内容も特に昭和の戦争とその戦争指導者を糾弾し、すべてを否定する文言がやけに目に着き、墨子を語るはずが自分の思いの丈を語って終始している印象。
タイトルの「墨子よみがえる」はほとんど無視されているに等しく、わずかにあとがきの中で読まれて欲しいという想いが語られているに過ぎない。
と、辛口の批評を書いてみたが、脱線そのものは含蓄に富み、実体験も交えられてなかなか興味深く、史記など他の書籍からの引用などもあり、それはそれで面白い。
この本をきっかけにして墨子を読もう、という気にはならないかもしれないが、墨子に興味があり、多少なりともその思想に触れたことがある人には面白く読める一冊だと思う。
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Atsushi Egi