仙台を中心に東北を地盤とする地域新聞の、東日本大震災被災から現在につながる活動の過程をまとめたもの。
あの日、激しい揺れで社内の設備が倒壊し、それまで100年以上にわたり続けてきた「休刊日を除く休刊なし」が途切れる危機を、友好提携している他社の力を借りて乗り切ったことや全社一丸となって不足する食糧、水、燃料の確保に駆け回ったこと、通信が途絶えた中、手書きの原稿を現地から手運びしたことなど、被災地の新聞社だからこその苦労やそれをどう克服したかが記されており、記録としても貴重だ。全国紙やテレビが原発事故にシフトしていく中、どうやって被災者に寄り添っていくのか、発災時の組写真も被災者の心情を考慮して掲載を見送るなど、自らも被災しているからこそ持てる視点で紙面を構成していく様子が描かれている。一方で、はたして良かったのかという自問も赤裸々に語られ、今も自問自答しながらの制作を行っている様子も見て取れる。マスコミだからこそ果たすべき役割、マスコミだからこその葛藤を見つめ直す、必読の一冊。
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Atsushi Egi