新進気鋭の歴史作家による第三作。
これまでの史実を元にした物語と異なり、完全なフィクションとして構成される本作は物語の舞台も西国、としか書かれず、しかも、地方豪族の小競り合いで物語が終始する。しかし、そのディテールはこれまでの二作に劣らず、火縄銃の構造から主従の関係、武士たちの態度に至るまで見事にその時代を生き生きと描いている。
物語は小太郎というやや抜けたところのある少年と勇猛な武者である平右衛門を軸に展開する。近接する児玉氏との戦で籠城することになるが、その籠城戦の過酷さから小太郎の神のような射撃の腕に頼るべく、畜生の選択をしてしまう平右衛門が最後に選んだ行動とは。
戦国の世を描きながら、戦の不毛さ、持つべきでない武器を得てしまった苦悩、我々が取るべき選択など、示唆に富んだ物語となっている。
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Atsushi Egi