小松左京初期の名作。
宇宙空間で確保された、地球上に存在しない生命体を培養して作られたウィルスによってあっという間に地球上からほとんどの生命体が絶滅してしまう恐怖を描く。
この作品の恐ろしいところは、件のウィルスがインフルエンザウィルスなどあっという間に変異してしまうタイプのものに隠れるようにして広がり、傍目には風邪だと思われているにもかかわらず、心臓麻痺などでどんどん死んでいく様子を描いていることだ。これはプリオンなどをはじめとする遺伝子を持たないウィルス様物質に相当し、非現実的な空想物語でなく、可能性として現実にあり得る世界を描いている。
エンディングに向けてもう一段の破局の可能性を描いているが、こちらは書かれた当時(1970年前後)の世相を反映しており、現在ではもっと複雑な様相を呈してはいるものの、こちらの恐怖も完全に払拭されたわけではない、というあたりもゾッとする。
小松左京のすごいところは、この作品がほとんどデビュー作と変わらない時期に執筆されていることで、この作品はその後の活躍が約束されるような高い完成度を誇っている。
Wow! ノートはまだありません
Atsushi Egi