綾辻行人氏の代表的シリーズの向こうをはって、と思われたかどうか不明だが、ユーモアミステリの代表作家による館もの。
綾辻氏の作品を例に出すまでもなく、トリッキーな仕掛けが施された館が舞台となることが多い館ものの例に洩れず、本作もその流れを汲む。瀬戸大橋がまだ姿を表していない岡山沖の瀬戸内海に浮かぶ小島が舞台とされているのも深い理由がある。
相変わらずのユーモアをふんだんに盛り込んだ作風は健在だが、烏賊川市シリーズと比べ無理やりユーモアを盛り込んだ感があり、やらせ臭い笑いの誘い方をしている印象があった。
また、作風の違いに起因するものではあるが、ミレニアム三部作を読んだ直後に読み始めたこともあり、余りの軽さに拍子抜けしてしまった。
これらはさておき、純粋な館ものミステリとして見た場合、トリックを含め、良く考えられているし、すべての謎がきちんとはまるべきところにはまるパズラー要素もあり、よくできた作品であることは間違いない。ただ、個人的印象としては、館ものとユーモアは今ひとつマッチしない印象が残ったのは否定できない。
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Atsushi Egi