著者は朝日新聞社の記者である。その仕事を通じて知り得た年金について、世の中に蔓延している誤解を正し、未納によって不利益を被る人がより少なくなるような啓発も兼ねて本書を執筆したそうだ。
まず、冒頭から「年金は絶対に破綻しない」ことの論拠を懇切丁寧に説明するところからはじまり、年金の本質とは何か、課題は何か、といったことを一つ一つ明らかにしていく。本書で解説されている内容は確かに網羅的で、本書さえ読めば年金のことは本質において完全に理解できるという著者の意気込みが感じられる。
民主党が「国民の生活が第一」なんていって口当たりの良い「抜本改革」を前面に押し出したせいで、本来進めなければいけなかった様々な課題への対応がおろそかになったり、廃案に追い込まれてきたというのも皮肉な結果である。
野田総理は少なくともこれまでの民主党の首相に比べれば現実路線を進んでいる。消費増税も必要だというのは確かだろう。ただし、同時にデフレを克服し、消費増税が行われても景気が減速しない施策を合わせて実施しなければ、本当の解決にはならないと本書でも指摘されている。
どこまでも現実的に執筆されていることに好感を持った。
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Atsushi Egi