海軍元帥山本五十六の伝記の下巻。
聯合艦隊司令長官となり、訓練に明け暮れる一方、アメリカを相手とする戦争には米内光政、井上成美らとともに反対し続けていたが、もはや抗いきれず開戦の方針が打ち出される中、アメリカを相手にするなら真珠湾を、というかねてからの構想を実現させるべく動き始める。その一世一代の賭は奇跡的な戦果を上げるが、半年後には山本の無茶な案が元でミッドウェーにて大敗を喫する。この光と影のような双方の作戦立案に山本が大きく関わっていたことは、その後の展開を含め皮肉な感じもする。
やがて昭和18年4月、自ら前線の慰問に行くといってきかなかった山本は、詳細な慰問スケジュールの暗号電信を米軍に解読されているとも知らず、ブーゲンビルにとびたち、撃墜される。あれほど早くから航空機に着目し、あれほどアメリカのすごさを説いていた人にしては、周囲の諫めをきかずに飛び立ったのはまさしく「死に場所を得たかった」としか思えない、無責任きわまりない行為ではなかったかと思う。
それにしても、巻末の取材対象ならびに参考文献の量はものすごい。いろんな批判はあるだろうが、大変な力作であることは間違いない。
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Atsushi Egi