橘玲氏による「マイクロ法人のすすめ」の文庫化加筆版。
例によって非常にドライなというか、感情を交えないストイックな物言いとともに、サラリーマンであることの非合理性と法人化によるメリットを詳説する。途中、サザエさんの家庭をモデルケースに、マスオさんがサラリーマン法人化したらどうなるかを検討するなど、おもしろおかしく、それでいて身近に感じられるように工夫しているが、ファイナンス理論が解説される段になるとたちまち難しくなる。
この人の他の著作もそうだが、ある意味わからない人はわからなくて結構、というような突き放し感がそこかしこに見られる印象が強い。それが「実用的でない」などの批判を受ける一端になっているように思う。
実際には本書の「マイクロ法人」にしろ、「残酷な世界で生きのびるたったひとつの方法」で紹介されていたロングテール理論にしろ、他の人が提唱している考え方をより実践的に紹介しているのだが、それまでの考え方を変えられない人が理解できないために批判している、と言えなくもない。
ただし、本書のあとがきに書かれていたように、幾ら有利だからといって、サラリーマン法人が増えたという話は寡聞にして知らないし、むしろ雇用の安定化をめざして「社畜化」する方向性が強まっているようにもみえる。サラリーマン法人が増えない今こそ、そのメリットを最大限享受できる、といえそうだが、自分に当てはめてみてもなかなかその一歩は踏み出せないものだと思う。
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Atsushi Egi