自衛隊出身の臨床心理士・岬美由紀が活躍するシリーズ第1弾。
この作家の本は体裁が変わったり出版社が変わるごとに大幅に改稿されているようで、本書は9.11などもふまえて書き換えがなされている。物語は新興宗教と対立する国家側を取り巻く手に汗握るやりとりが展開され、そこかしこに催眠術や心理学の蘊蓄がちりばめられている。
物語の盛り上がりとは別に、主人公が悪の元締めにたどり着く瞬間がアッサリとしていて若干の拍子抜けの感がないわけではないが、バイクや自衛隊機を自在に操りながら追い詰めていくさまはスリリングで楽しめる。ただ、主人公が自衛隊のパイロットだった設定は良しとしても、主人公が通う病院の院長であり、臨床心理の手ほどきを加えた友里佐知子がものすごいクルマを疾駆させたり、新興宗教の幹部が自衛隊機を自在に操るなど、ちょっとやり過ぎではないかと思えるシーンもあり、物語の展開に疑問符が並ぶ部分もある。
すでにシリーズ化されているからかもしれないが、今後の作品への伏線と思えるところが所々に貼られていて、続きを読みたくなるような仕掛けもなされている。気になるところはあるにしても、エンターテインメントとして楽しめる一作である。
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Atsushi Egi