この本が哲学書としては異例のヒットを飛ばしていることをラジオで聞き、読んでみた。結果、こうやって文章を書かずにはいられないほどおもしろい。
この本は、人が退屈する謎を解き明かし、退屈するという問題に対して、明確な結論を提示している。話は「定住革命」に至る人類史や、退屈という問題に取り組んだ歴代の哲学者たちなどを例に挙げ、順序良く結論に到達する。内容は非常にわかりやすく、爽快なほど明確な結論に至るまでの考察は、説得力があり、納得したという気持ち良さがあった。
400万年の人類史の中で定住生活が始まったのが1万年前から。そこで暇と退屈の問題が初めて明確に登場し、縄文土器などの芸術が現れてきたと、本書は指摘している。
この指摘は、僕にとって衝撃的だった。
つまり「芸術」はわりと暇だったから社会に登場したということになる。そしてそれは、縄文人にとっては退屈とたたかう術で、必要不可欠だった。
これを現代のあらゆる芸術に照らしてみると、とてもおもしろい。
芸術が日用品に至るすべてのものに浸透した社会は、とても暇があり、それは退屈とたたかっている証拠といえる。金持ちの過剰な芸術好きは、退屈とたたかっている証拠。オシャレな人も、絵が好きな人も、映画が好きな人も、退屈とたたかっている。なぜなら、人は退屈を無視することは出来ず、退屈に耐えられないから。
本書は、他にもいろいろなインスピレーションを与える。いちいち羅列してられないので、興味を持ったかたは読んでみてほしい。
※カバーに付いている、何をしていいのに~の下りは本書の意図とは違う気がする。読んだ方がいれば意見を聞きたい。
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梅田夏樹