小松左京の代表的SFの続編下巻。
上巻で感じていた「小松左京テイスト」の欠如はついに最後まで払拭されることはなく、唯一盛り上がりかけたのは、日本列島沈没とその際に巻き上げられた粉塵が、やがて地球の寒冷化を促進する下りを地球シミュレータによって詳細に解説する部分のみだ。
だらだらと続く割に、肝心なところで場面が切り替わり、そのまま時間だけが経過してそれまでのやりとりのフォローもないままに物語が進んでいく、という繰り返しで、やがてその手法にも飽きが来るし、第1部にあったようなカタルシスに至る暴力的な盛り上がりもほとんどなく、淡々と進行する。全世界を舞台に繰り広げられる割には壮大なスケール感に乏しく、ほぼ日本列島とその近海だけを舞台にしている割に、圧倒的なスケール感で迫ってきた前作とはあまりにも違う。このあたりがやはり、小松左京という作家のすごい部分であり、幾らモチーフを借りてきたとしてもその域に至るにはとうてい越えられない壁が存在するという印象が強い。
小松左京氏は本当にこうした物語を描きたかったのか?氏が鬼籍に入ってしまった今となっては果たして、という感じではあるが、素材がいいだけになんとも煮え切らない作品という印象が拭えない。決してつまらない作品ではないが、絶賛することは出来ない。そんな作品である。
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Atsushi Egi