綾辻行人による怪奇譚。
よくホラーという紹介のされ方をすると思うが、ホラーとは違う印象。どちらかというと、怖いけどそれよりもゾクゾクする気味悪さとか、後味の悪さとか、不思議な感覚が残る。解説にも書いてあったように、「ミステリー・ゾーン」とか、日本で言えば「世にも奇妙な物語」とか「Y氏の隣人」に通じるところのある作品集。
もともと綾辻行人のミステリー作品はスプラッタ系の薫りがするものが多いのだが、その趣味を少し不条理な方向に振ったという感じ。文体はいかにもな綾辻節で、それがまた、まがまがしい感じをかき立てている。
いずれの作品にも咲谷由伊という女性キャラクターが出てくるが、各作品の関連性はなく、役どころも異なっている。このキャラクター名は「最後の記憶」や「どんどん橋、落ちた」に収められた一遍「意外な犯人」にも出てくる。手塚治虫作品における「ランプ」や「ヒゲオヤジ」のような、作者お気に入りのキャラクターということか。
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Atsushi Egi