綾辻行人による精神病患者短編シリーズ。
ホラーテイストでもあり、ミステリとしての性格も持ちつつ、精神病患者という題材を愛を持って描ききるという異色の短編集。母親によって殺されかけたという思いから母親への看病をためらう青年、事故によって両足切断、顔にもひどいヤケドを負った記憶喪失の患者、スランプ気味の作家だと信じて疑わない患者が書いたというミステリ。そのどれもが意外な展開を見せ、最終的に納まるべき所に納まっていくさまはミステリ作家綾辻行人の真骨頂とも言える。
綾辻行人らしい言い回しや少し湿り気のある文体が物語の世界観にほどよくマッチしており、独特の雰囲気をまとっている。作者には是非続編を書いてもらいたい一作だ。
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Atsushi Egi