「亡国のイージス」や「終戦のローレライ」「Op.ローズダスト」など、自衛隊や日本軍との関わりを主軸に置きながら国の有り様を世に問うてきた福井晴敏が東日本大震災後の日本を描く。
震災前はあまり口をきくこともなかった父と主人公の和解の足跡と、子供たちが「何かしたいのに何も出来ない」とボランティアに励む姿に浮かび上がる人間関係の難しさ、復興への道しるべとして何を目指すべきなのかなど、一口には語れない問題をごく普通の家庭の問題として描いていく。一部福井晴敏らしい仕掛けというか、これがあるおかげでごく普通の家庭ではなくなっているところもあるが、根底に流れるものは作者の希望も含め、復興への思いだろう。
この物語は震災から半年ほどが描かれているが、残念ながら、現実は作者の描いていた希望とは相容れないような流れでこれまで推移しているような気がする。自分たち一人一人がこれから先をどう生きていくのか、もう一度考え直す一つのきっかけとなる作品だと思う。
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Atsushi Egi