2012.10.23.読了。久々の東野圭吾作品。ここは怪しいな…など自分なりに推理しながら読んでみても、毎度のごとく気持ちよく期待を裏切られるのはさすが。DNA管理が近い将来あり得ることかもと想像すると、すでに存在するシステムへの恐怖も感じる。来春公開の映画も良い作品になることを期待!
2012-10-23 01:20:09東野圭吾による近い将来起こってもおかしくない、管理社会への警鐘を込めたエンターテインメント。
人間のDNAからその個人の特徴、とくに容姿さえも特定できる画期的な個人特定プログラムが開発され、犯罪捜査において重要な役割を果たすようになった世界で、その画期的なプログラムを作成した希有な才能の持ち主兄妹が殺害される。その犯人としてDNAから導き出されたのは、その兄妹と懇意にしていたプログラム開発者の一人。しかし、本人には全く覚えがない。一方で、その開発者はいわゆる二重人格によって、別人格の時の記憶がないことによって、本当に自分がやってないのか確信が持てない。そんな中、追われる立場となった開発者はやがて真相を解き明かすべく、やむなく行動に出ることになる。
東野圭吾の、理系頭脳が真価を発揮する一作。DNA情報に生物の組成がすべて含まれるとする科学者が、自らが容疑者とされるにいたってそれが本当に正しいことなのか疑問を抱き始める課程は、科学万能と思われている現代に対する警鐘でもある。一方で、その科学的な有無を言わさぬ手法がある意味犯罪を抑止しうる可能性も否定しない。さらには、そうはいっても裏で牛耳っているいわゆる「権力者」の側にいる人たちはそのプログラムの外でやりたい放題が出来るようになる可能性も秘めており、エンターテインメントなのに現実社会の虚と実、裏と表をある意味描ききっているところがさすがと言わざるを得ない。
堅苦しい、科学的主題でもあり、重くなりがちなテーマなのに、実にさらっと読ませるあたりも、東野圭吾ならではと言える。しかしながら、本作のような現実が実現することの薄ら寒いような怖さは、読後もぬぐい去ることが出来ない。
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Yuki Takeshita